2023 Fiscal Year Annual Research Report
The reception of Paul Claudel in Japan - with a focus on the dramatisation of Claudel's works in Noh
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18K12345
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西野 絢子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (60645828)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クローデル / 日仏文化交流 / 能 / 演劇 / フランス文学 / ジャポニスム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である2023年度は「日本におけるクローデルの受容」を総括的に明らかにするために、吉江喬松によるクローデル受容の問題に取り組んだ。プロレタリア文学の父・小牧近江、新劇の父・岸田國士に続き、クローデル受容に積極的に貢献した仏文学者、吉江喬松は、象徴派劇詩人メーテルランク受容にも精力的に働き、メーテルランク・ブームを推進した一人でもあった。そこで吉江によるクローデル紹介をメーテルランクのそれと比較したところ、吉江の比較文学者としての才能が再認識された。また吉江が小牧近江と共に開催し、クローデルを招待したシャルル・ルイ・フィリップ講演会は、農民文学の父でもある吉江にとって重要な機会であったことがわかった。クローデルと吉江の関係を解明するなかで、日本におけるフランス文学の受容の歴史、大正期の日本文学の動向なども確認できたことは予想外の成果であった。さらに、吉江が翻訳した、クローデルが現代フランス美術について述べた記事は、これまであまり指摘されてこなかった、ジャポニスムの問題に関わることを発見した。この件は、クローデルとジャポニスムの関係という研究テーマで今後解明していく予定である。最後に、クローデルが日本を去るときに吉江に贈った短詩を分析したが、論文発表後に、クローデルの『百扇帖』に収められた全127の短詩の内容に対応する漢字を選別したのが、山内義雄だけでなく吉江も協力していたことを確認したので、別の機会で追記したい。 研究期間全体を通じた成果は、①日仏を往復するクローデルの貢献、つまりクローデルが日本文化の影響を受けて創作した作品が、さらに現代日本人の創作欲を刺激し新作能等をうみだし、それが日仏両国で上演される等の往復運動があることを解明したこと。②日本におけるクローデル受容が、小牧、岸田、吉江というジャンルの異なる大正期の文人達との関係により明らかになったことである。
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