2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12348
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
仁平 ふくみ 京都産業大学, 外国語学部, 助教 (70780758)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メキシコ北部の文学 / 国境の文学 / ヘスス・ガルデア / エドゥアルド・アントニオ・パラ / ダビー・トスカーナ / メキシコ文学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度のもっとも大きな成果はメキシコへ渡航し、メキシコ北部文学についての資料収集を中心に行ったことである。メキシコ大学院大学、メキシコ国立図書館等で資料を収集した。特に日本では資料の入手が困難であるヘスス・ガルデア(Jesus Gardea) について、またメキシコ北部文学について、1970, 80年代の文壇についての資料を閲覧・参照できたことが大きな収穫である。またガルデアの著作の多くを入手することができた。しかし、資料にはまだ不足があるため、今後も継続的に探してゆく必要がある。渡航の際には、メキシコ北東部サカテカス州出身である作家アンパロ・ダビラ(Amparo Davila) についての発表をメキシコ国立自治大学の幻想文学セミナー主催の国際学会で行うことができた。 また北部文学の代表的論客であるエドゥアルド・アントニオ・パラ (Eduardo Antonio Parra) の論を中心としてのメキシコ北部文学の定義とメキシコ文学史との関係をまとめた。アメリカ合衆国との関係を含めて北部の歴史、またそれによる経済的・文化的状況などについても整理している。メキシコ北部文学がリアリズムの手法をとるのみではないことを明らかにするために、メキシコ北部文学を簡略に定義しながらパラの幻想的短編を用いて北部の表象を分析した論文を現在投稿中である。また、パラと先行する作家としてのフアン・ルルフォやボルヘスとの関係を指摘した。 メキシコの研究者とも交流し、1990年代、2000年代の麻薬組織を描いた作家として注目されているビクトル・ウゴ・ラスコン・バンダ (Victor Hugo Rascon Banda) についての情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本では入手が困難であるガルデアの著作、および当時のメキシコ文壇の状況を知るための資料、メキシコ北部文学についての資料を入手することができたことが大きな収穫である。また、上記資料によってメキシコ北部文学史の輪郭をつかむことができた。しかしガルデアについての資料に穴があり、当時の新聞記事などはメキシコ国立図書館にも存在しないため、継続的に探してゆくことが必要である。メキシコ北部の人々を描いており、また文体が特徴的でもあるガルデア作品の分析の手法を決定することができていない。ガルデアのメキシコ文学史における位置とその作品の特徴と重要性について、より研究をすすめる必要がある。 パラの発言を中心としたメキシコ北部文学とメキシコ文学史のあり方についての概要を知り、整理することができた。また国境という特異な場所がどのような文学的トポスとなりうるのかをパラの幻想短篇を用いて分析することができた。研究計画調書に目的として記したメキシコ文学と北部文学の関係、メキシコ北部の作家によるメキシコ北部のフィクション化、北部の表象と現代社会の関係についての一端を明らかにできた。 しかしトスカーナを中心とした世界文学と北部文学の関係についての研究を進展させられなかったため、次年度以降に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
ガルデアの研究を、彼の代表的な短編集、小説をもとにすすめる。また当時のガルデアについての批評や反応を新聞記事や批評について分析する。 ダビー・トスカーナの作品におけるメキシコ北部の表象、および彼の作品におけるアメリカとヨーロッパとの関係が意味するものを分析する。トスカーナはメキシコ北部の歴史やアメリカ合衆国との関わりの歴史について、ヨーロッパを参照軸とする作品を発表しているため、それについて考察する予定である。特にポーランドを舞台とした小説 La ciudad que el diablo se llevoについての分析を中心とする予定。 引き続きパラの短編を分析し、メキシコ北部の文化や習慣の表象を分析する。またパラが編集した北部出身の作家のアンソロジー『北 ひとつのアンソロジー』に収録されている作家の中にパトリシア・ラウレント・クリックのようにメキシコで暴力が激化する以前からこれに注目していた作家がいることがわかったため、継続して調査していきたい。 本年度は11月にメキシコ北部のソノラ大学で、3月にテキサス大学エルパソ校で国際学会が開催されるため北部の作家についての研究発表を行いたい。各国の研究者と交流し三人の作家について、また北部文学に対する各国の傾向や注目されている作家についての情報収集を行う予定である。また、モンテレイなどメキシコ北部の大学にも資料収集のための訪問を予定している。
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Research Products
(1 results)