2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12348
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
仁平 ふくみ 京都産業大学, 外国語学部, 助教 (70780758)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | メキシコ北部の文学 / 国境の文学 / ヘスス・ガルデア / エドゥアルド・アントニオ・パラ / ダビー・トスカーナ / メキシコ文学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は複数の研究発表および論文発表を行うことができた。まず昨年度投稿したエドゥアルド・アントニオ・パラについての論文が掲載された。複数の相対するものが混在する場所としてメキシコ北部を表象する文学的操作についての一端を明らかにした。また昨年度からの課題であったダビー・トスカーナ作品におけるメキシコとヨーロッパとの関係についても東京大学人文社会系研究科の紀要に発表した 小説La ciudad que el diablo se llevo についての論文と、それを発展させたテキサス大学エルパソ校での発表で論じることができた。メキシコの歴史に強い興味を持ちながらもメキシコ-アメリカ国境を世界の国境と結びつけ創作を続けるというトスカーナの手法の大きな特徴を明らかにすることができた。参加した学会では、他の研究者らからトスカーナ作品の幻想的側面、世界文学との関わりについてのさらなる研究の必要性等の指摘を受け大変有意義であった。またソノラ大学の国際学会でメキシコ北東部出身の女性作家アンパロ・ダビラの短編とアルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの短編の関連性を指摘する発表を行うことができた。メキシコの地方の文学と世界の文学の関わりについて多くの研究の余地があることが明らかとなった。 海外出張において、資料収集を行うことができた。また研究対象であるパラと面会し、パラの紹介によってメキシコ北部の重要な作家であるエルメル・メンドーサ、またヌエボ・レオン自治大学の人文系出版部の責任者にインタビューすることができた。これを通じて現在にいたるメキシコ北部文学の系譜、現在の若手作家について知識を得ることができ、また多くの文学作品についての情報を得た。特にパラには来年度以降の研究への協力を依頼し、受諾いただいた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文投稿、発表の機会が多くあり、またそこで他の研究者と知り合い、情報交換をすることによって有益な研究の題材が見つかった。また、資料の収集もスムーズに行うことができ、学会やインタビュー等を通じ、メキシコ北部の複数の研究機関の文学関係の出版物を入手することができた。メキシコ文学史におけるメキシコ北部文学の位置、また現在のメキシコ北部文学の状況等の輪郭を以前より正確に把握することができている。特にパラとトスカーナについてはメキシコ文壇における彼らの位置をかなり理解できるようになった。パラは土地に根付いた創作を行い、メキシコ北部の地域性にこだわる一方で、トスカーナはヨーロッパを題材とした作品や地域性を重要視していないように思われる作品も発表しているが、二人に共通しているのは境界性への意識、メインストリームの外からの視点であると考える。 本年度は特に、トスカーナ作品を中心としてメキシコ北部文学とヨーロッパ文学の接続に注目して研究をすすめた。発表と論文を通じて、メキシコ北部という境界の地からヨーロッパの歴史を見ると共通点が複数あり、メキシコ北部文学は単なる地域文学にとどまらないことを示すことができた。 また海外出張によって多くの資料や情報を収集することができた。メキシコ国立自治大学、メキシコシティの国際ブックフェア、モンテレイのヌエボ・レオン自治大学の図書館と書籍部でガルデアをはじめとした多くのメキシコ北部文学の作家とその資料を入手した。また研究を進める中で新たに注目しているRicardo Elizondo Elizondo、Patricia Laurent Kullickの多くの書籍を入手・閲覧することができた。北部の作家がおかれた作品の出版・流通の状況について知見を得た。 しかしガルデアについての作品の分析があまり進んでいないことが課題である。彼の作品の重要性を示すことが必要となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
メキシコのそれぞれの地域で読まれている作家、活動している作家を知ることで広範な北部の地理的特徴と共通点、差異等が実感としてわかってきた。その中で特に対象としているヘスス・ガルデアがどのような位置にいるのかを確認する必要がある。今年度は特にメキシコ文学史におけるガルデアの重要性について検討をすすめたい。1980年代から創作を開始したガルデアを、メキシコ北部から創作しながらも、20世紀の半ばに活躍した作家の伝統を引き継ぎ、21世紀の現代へとつながる橋渡しをしたメキシコ文学史上においても重要な作家であるという前提のもとに分析してみたい。すでに多くのガルデア作品、主要な研究等は入手しているため、作品の精読と分析を通じて検討する。そのためには同時代の作家を通じてガルデアの特徴を明らかにすること、現代メキシコ作家の作品を分析し、彼らが受けたガルデアからの影響を把握することも重要であると考えている。海外の研究者の協力もあおぎつつすすめていく。 また、2021年度に計画しているメキシコ北部文学についてのイベントの準備をすすめるため、パラを始めメキシコ北部出身の現代作家との連絡をとる予定である。
|
Research Products
(4 results)