2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K12348
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
仁平 ふくみ 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (70780758)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メキシコ北部の文学 / ヘスス・ガルデア / メキシコ文学史 / 国境の文学 / 場所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、メキシコ北部の作家の作品と場所の関係について考察した。「場所」という概念をあらためて定義し、文学的トポスとしてのメキシコ北部が主にヘスス・ガルデアの作品においてどのように表象されているかを分析した。この場所の感覚は過去の記憶を呼び覚ますものであり、また作品の中で孤独や暴力、郷愁を描く際に効果的に用いられている。ガルデアの作品においては場所と登場人物の性格や心情が呼応する形で描かれており、孤独や怒りを風景によって表現する手法が用いられている。また、ガルデアの作品には共感覚的な表現が多く、それも登場人物の心情や感覚と場所とを結びつける技法の一つとなっている。 また、メキシコ文学史におけるガルデアをはじめとしたメキシコ北部の作家たちの新しさについても確認した。ガルデア、ダニエル・サダ、リカルド・エリソンドらは、1970年代以降、それまでメキシコ文学においてほとんど注目されてこなかったメキシコ北部の自然や人々を扱って創作し、新しい潮流をつくったことを確認した。この特定の「場所」を描くという姿勢によって彼らが特異な存在となったのではないかと考えている。また、フアン・ルルフォの作品とメキシコ北部の作家の創作態度や手法の類似について、ごく一部であるが著書に記している。 昨年度から引き続いて、現代メキシコの政治的動乱、暴力、貧困、女性、移民の状況等について描いている作品についての読解・分析も行なっている。昨年度名前を挙げたE. メンドーサ、P. ラウレント・クリックに加え、ティファナを中心としたメキシコーアメリカ国境を扱うルイス・ウンベルト・クロスウェイトの作品にも注目している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度と同様、コロナウイルス感染の状況が収まっていないためメキシコに渡航しての資料収集・情報収集ができなかった。 また、今年度はメキシコから作家を招聘してイベントを行いたいと考えていたが、これもコロナウイルスのため開催することができなかった。来年度、外国からの渡航の制限が緩やかになった段階ですみやかに計画をたてて行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
メキシコ北部文学についてある程度俯瞰的な時代・地域の見取り図のようなものを作り、今後の研究に活かしたい。メキシコ北部文学の多様性と豊かさを示すことができるように何らかの形にまとめたい。 海外からの渡航の制限が緩やかになった場合には、メキシコから作家を招聘してイベントを行う予定である。もしもコロナウイルス感染の状況が改善せず招聘が難しい場合には、申請者がメキシコに渡航し複数回インタビューを行いそれを録画して公開する、オンラインでのインタビューを行う等の代替措置を検討している。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染が収束しなかったため、計画していたメキシコからの作家の招聘ができなかったため。 海外からの渡航の制限が緩やかになり次第、メキシコから作家を招聘してイベントを行う予定である。もしもコロナウイルス感染の状況が改善せず招聘が難しい場合には、申請者がメキシコに渡航し複数回インタビューを行いそれを録画して公開する、オンラインでのインタビューを行う等の代替措置を検討している。
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Research Products
(1 results)