2020 Fiscal Year Annual Research Report
A comprehensive philological study on development of Aesop's fable collections and education in early modern Europe
Project/Area Number |
18K12349
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 斉 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (60773851)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イソップ / 古典受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、16世紀末にイエズス会士により日本で翻訳刊行された『エソポのハブラス』および17世紀初頭に刊行された『伊曽保物語』をおもな対象として、近世・近代の西洋から日本へのイソップ集の移入やその在り方について検討を行った。それらの成果の一部は、「「イソップ」の渡来と帰化」(葛西康徳、ヴァネッサ・カッツァート編『古典の挑戦』所収、知泉書館、2021年)にまとめた。
16世紀半ばに日本へキリスト教を伝えたイエズス会は、日本で教育活動を展開し、当時西洋にあったと思しきラテン語イソップ集も持ち込んだ。イソップ集はとくに日本語学習教材として日本語に翻訳され、1593年には『エソポのハブラス』が印刷刊行された。一方、『伊曽保物語』は、17世紀初めに仮名草子として刊行され、『エソポのハブラス』とも内容が一部重なる。1608年までにイエズス会士ジョアン・ロドリゲスが編纂した『日本大文典』は、『エソポのハブラス』『伊曽保物語』由来の文例を含み、『伊曽保物語』とイエズス会の関わりも確認できる。しかし、『エソポのハブラス』が当時のキリスト教禁教政策の進展とともに姿を消す一方で、『伊曽保物語』は、『エソポのハブラス』とは異なる方針のもとに刊行され、結果として江戸時代唯一の日本語翻訳イソップ集となった。両者とも近世日本で刊行された類似の日本語翻訳イソップ集であるが、その在り方の相違には注意を要する。
なお、『エソポのハブラス』の原典は未だ詳らかではない。16世紀のイソップ集では、ラテン語系統の話やギリシア語系統の話、あるいは当時創作・改変された話などが多層的に拡がり、個々の話のレベルで当時のイエズス会士が参照可能なものとして、多様なヴァリエーションの話が混在していた。『エソポのハブラス』の場合、翻訳時に独自の改変も加えられており、原典は同定困難な可能性もあるが、その探索は引き続き検討課題である。
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Research Products
(1 results)