2018 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Analysis of Boundary-Crossing Literature Written by Colonisers in the Caribbean and on the Korean Peninsula
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18K12354
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
杉浦 清文 中京大学, 国際英語学部, 准教授 (40645751)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 植民地主義 / 朝鮮半島 / 引揚者 / 白人クレオール / カリブ海地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度に実施した研究成果は以下の通りである。まず、平成30年度は研究実施の初年度ということもあり、一年を通して、書店や国会図書館等で当該研究において重要かつ必要とされる資料を購入・収集し検証することに専念した。 また、4月28日に青山学院大学で開催された黒人研究学会例会では、「移民芸術家Edwidge Danticatにとっての「英語」使用」というタイトルの発表を行った。本発表は、エドウィージ・ダンティカの複雑な故郷観に着目したが、「白人クレオール」作家たちの抱く故郷観を再考する上で重要であった。さらに「研究実施計画」の通り、12月8日に中京大学で開催された日本比較文学会中部支部大会シンポジウムでは、杉浦がコーディネーター・企画・運営を担当し、司会兼研究発表も行った。その際、大阪大学伊勢芳夫教授(日本キプリング協会会長)、中京大学林久博准教授、中京大学樹本健准教授にご協力頂いた。そのシンポジウム「帝国崩壊と本国帰還―イギリス、ドイツ、日本における(旧)支配者たちの<語り>―」(杉浦の研究発表タイトル「少年時代の断片化された記憶――三木卓と『ほろびた国の旅』」)では、とりわけ帝国崩壊前後に「本国帰還」を経験した、イギリス、ドイツ、日本における(旧)支配者たちの<語り>の問題性と可能性について検証した。本シンポジウムは、「(旧)植民地で生まれ育った植民者」の複雑な立ち位置を地球規模で精査するという、「本研究の目的」を達成させる上で意義のあるものとなった。 最後に平成30年度は9月15日に中京大学にて伊勢教授、林准教授、樹本准教授と共に「(旧)植民地で生まれ育った植民者の文学」に関する研究会(代表:杉浦清文)を開催した。この研究会では「(旧)植民地で生まれ育った植民者」にまつわる加害者性・被害者性の問題について再検証できた。本研究会の成果は上記シンポジウムでも活かされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、まず何よりも、「白人クレオール」の文学、「日本人引揚者」の文学、「比較文学」、「世界文学」、「ポストコロニアル」研究にかかわる主な資料を購入・収集し精査できた。 「白人クレオール」の文学研究に関しては、黒人研究学会で研究発表を通して、「白人クレオール」の故郷観について再考する上で重要な視点を見出した。特に、発表後の質疑応答では、当該研究の最先端を行く専門家たちの間で有意義な議論・意見交換を行うことができた。また、「研究実施計画」の通り、平成30年度は、当該研究の高い見識と業績を持った国内の研究者の協力を得て、「日本人引揚者」の文学を地球規模で再考するシンポジウムを日本比較文学会中部支部大会において開催した。このシンポジウム「帝国崩壊と本国帰還―イギリス、ドイツ、日本における(旧)支配者たちの<語り>―」は、「(旧)植民地で生まれ育った植民者」に関するアイデンティティの研究を、イギリス、ドイツ、満州から生み出された「物語」の研究へと拡張する新たな可能性を見出すきっかけともなった。特に、このシンポジウムを通して、「(旧)植民地で生まれ育った植民者」に関する様々な問題群を第一線で活躍する専門家たちと議論・意見交換できたことは、今後の研究を有意義に進める上で極めて重要であったと考えられる。さらに、平成30年度は「(旧)植民地で生まれ育った植民者」の文学に関する研究会も開催し、当該研究のテーマを学際的・多角的に検証できた。 現在のところ、英語圏カリブ海諸島または韓国での現地調査を実施していない。しかしながら、以上の成果から判断して、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は、英語圏カリブ海諸島出身の「白人クレオール」の文学(主にジーン・リース、フィリス・シャンド・オルフリー、ローレンス・スコット)と、朝鮮半島からの「日本人引揚者」の文学(主に森崎和江と小林勝)を比較越境的に検証することである。平成30年度は、とりわけ日本比較文学会中部支部大会において開催したシンポジウム「帝国崩壊と本国帰還―イギリス、ドイツ、日本における(旧)支配者たちの<語り>―」により、「日本人引揚者」に関する文学の考察を予想以上に進めることができた。 平成31年度・令和元年は、「研究実施計画」の通り、特に「白人クレオール」の文学に焦点を合わせた研究を遂行していきたい。現在、中京大学の在外研究制度を利用して、(英)リーズ大学英文学研究科でジョン・マックラウド教授の指導の下、特に「白人クレオール」の現代作家ローレンス・スコットの文学に関する研究をすすめている。今年度は、今回の在外研究の機会も最大限に活かして、スコットに関する研究を深化させたいと考えている。その際、リーズ大学のブラザートン図書館及び大英図書館に所蔵する、「白人クレオール」の文学、ひいては「ポストコロニアル」文学に関する、日本では入手困難な実証的資料を収集し、整理・検証していく。また、英国内で開催される、「ポストコロニアル」文学研究に関連する学会、研究会、イベントにも参加し、「白人クレオール」の文学をより巨視的な視点から再考すると共に、当該研究の高い見識と業績を持った英国の研究者との知的交流を深める中で国際的なシンポジウム、講演会、研究会等の今後の開催に向けて具体的に検討していきたい。さらに今後、英語圏カリブ海諸島または韓国での現地調査も行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度において39円の未執行額が生じたが、極めて少額のため該当年度の使用額をほぼ全額執行したといえる。
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Research Products
(2 results)