2021 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Analysis of Boundary-Crossing Literature Written by Colonisers in the Caribbean and on the Korean Peninsula
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18K12354
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
杉浦 清文 中京大学, 国際学部, 准教授 (40645751)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植民地主義 / 朝鮮半島 / 引揚者 / 白人クレオール / カリブ海地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度における研究成果として、研究論文に関しては、以下4点をあげたい。①伊勢芳夫編者『「近代化」の反復と多様性―「東と西」の知の考古学的解体』の中に、論文「少年時代の断片化された記憶、そして<原体験>―三木卓の『ほろびた国の旅』を読む」」を掲載した。②『立命館言語文化研究』33(1)において、論文「植民者二世と朝鮮―森崎和江の詩におけるダイアローグ、そして共振について」を発表した。③中川成美・西成彦編者『旅する日本語―方法としての外地巡礼』の中に、『立命館言語文化研究』33(1)に掲載した論文に大幅な加筆修正を施した論文(タイトルは同じ)を載せた。④『黒人研究』No. 91においては、黒人研究学会第67回全国大会シンポジウムで行った研究発表の原稿(タイトル:Wide Sargasso Seaを読むこと―ハイチ系アメリカ作家Edwidge Danticatの場合)に大幅な加筆修正を行った論考を掲載した。 次に研究発表については、以下3点があげられる。①黒人研究学会第67回全国大会シンポジウム「故郷と帰属―境界を再考する」で、「Wide Sargasso Seaを読むこと―ハイチ系アメリカ作家Edwidge Danticatの場合」と題する発表を行った。②日本アメリカ文学会第60回全国大会シンポジウム「<ホラー>の機能―恐怖のフィクションは<アメリカ>の何を表象するのか」においては、「恐れずに創作すること/書くこと―<移民芸術家>Edwidge DanticatのThe Dew Breakerを読む」というタイトルの発表をした。③日本英文学会第73回中部支部大会シンポジウム「「旅」をめぐるイギリス小説―空間と語りの変遷」で発表(タイトル:「故郷喪失者との対話―Jean Rhys による 1936 年の帰郷をめぐって」)し、リースの故郷観を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度においては、既述した4点の研究論文、すなわち、『「近代化」の反復と多様性 ―「東と西」の知の考古学的解体』、『立命館言語文化研究』33(1)、『旅する日本語―方法としての外地巡礼』、『黒人研究』No. 91おいて掲載された論文を執筆する中で、朝鮮半島や満洲における(旧)植民者の複雑な立場をより深く理解できた。また、同じく既述した、黒人研究学会第67回全国大会シンポジウム、日本アメリカ文学会第60回全国大会シンポジウム、そして日本英文学会第73回中部支部大会シンポジウムにおいて研究発表をする機会を得たことにより、日本の専門家たちと意見交換を行う中で、カリブ海地域における(旧)植民者の入り組んだ立場や、さらには<横領的>な読みや<交叉的読書>(西成彦)といった当該研究において重要な研究アプローチをさらに探究できたことも確かである。 しかしながら、令和3年度も引き続き、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、残念ながら研究計画を予定通りに進めることは難しかった。たとえば、英国からジョン・マックラウド教授(英国リーズ大学)を日本に招聘することは難しく、講演会や研究会を開催できなかった。また、昨年度と同じく、こうしたコロナ禍の中では、韓国、英国及びカリブ海地域での現地調査も実施することは困難であった。 以上の理由により、現在までの研究の進捗状況は、「やや遅れている」と考えられる。その結果、研究期間をさらに一年延長することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる令和4年度の研究推進方針として、まず、これまで収集してきた資料の整理・検証を行っていきたい。具体的には、①令和元年度においてリーズ大学の図書館及び大英図書館で収集した白人クレオール文学とポストコロニアル文学全般に関する資料を整理し、再検証していく。そして②当該研究に必要な資料・図書をさらに購入していく予定である。 また今後、新型コロナウイルス感染症が収束しない場合は、主に、Zoom等を利用してリモートで朝鮮半島およびカリブ海諸島における(旧)植民者の文学に関する研究会や、できれば講演会も開催していきたい。しかし、今後、新型コロナウイルス感染症が収束した場合は、これまで実現できなかった、特に以下3点を積極的に行いたい。①国外の研究施設において、実証的資料の収集を行う。②国外で催される、とりわけ朝鮮半島からの引揚者やカリブ海地域の(旧)植民者の文学研究に関連した学会、研究会、イベント等に積極的に参加していく。③韓国、英国及び英語圏カリブ海諸島での現地調査を実現する。 以上を令和4年度の研究推進方策としたい。
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Causes of Carryover |
令和3年度もまた、新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、韓国及びカリブ海地域における現地調査を行うことはできなかった。また、英国から著名な研究者を日本に招聘し、対面での講演会や研究会を開催することも極めて困難であった。以上の理由により、研究期間をさらに一年延長することにした。 令和4年度は、令和3年度の未使用額500,029円を全て執行する予定である。具体的には、以下2点について考えている。新型コロナウイルス感染症が収束した場合は、①国内及び国外における研究施設、図書館等での資料収集や国内外(とりわけ、韓国、英国及び英語圏カリブ海諸島)で現地調査を行うときに、旅費として執行したい。②資料や図書を購入する際に、物品費として執行する。ただし、引き続き、新型コロナウイルス感染症が収束しない場合は、主に、当該研究に関連した資料や図書を国内外から購入する際に、物品費として執行していく予定である。
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