2019 Fiscal Year Research-status Report
説話に見られる日中動物観の比較研究―『太平広記』と『夷堅志』、『夷堅志和解』
Project/Area Number |
18K12355
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
黄 イク 国文学研究資料館, その他部局等, 特定研究員 (10814808)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 夷堅志 / 夷堅志和解 / 太平広記 / 動物説話 / 怪異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は『太平広記』と『夷堅志』における動物の説話を種類別・地域別・時代別に抽出・整理し、『太平広記』に収録された宋代以前の説話と『夷堅志』に収録された南宋を中心とする説話の比較分析を行い、両書に取り上げられた動物説話の時代的・地域的特徴を考察するものである。さらに、江戸時代に出版された『夷堅志』の和訳本である『夷堅志和解』(元禄3年(1690)序、貞享3年(1686)跋)の編纂・流布状況を考察することによって、日本における『夷堅志』の受容を考える。 本年度は「『太平広記』与『夷堅志』中的動物志怪故事―其世俗性与怪異性」という題目で第6届叙事文学与文化国際学術研討会(2019年10月、台湾師範大学)にて研究発表を行った。動物の怪異を中心に、『太平広記』に見られる「物老為怪」という年老いた動物が怪異をなし、怪を引き起こす動物を殺してしまえば怪異が治まる早期の志怪小説に見られる怪異観と、人間は怪異の力に勝つことができず、不条理で悲惨な死を遂げるという『夷堅志』に散見する怪異観を取り上げた。また、「『夷堅志』における動物説話の特徴をめぐって」という題目で総研大文化フォーラム2019(2019年12月、国文学研究資料館)にて報告した。『夷堅志』動物説話の世俗性に注目して、本書甲志巻11に見える「松江鯉」という鱠が生き返る説話を取り上げ、この話型の中国と日本における変遷を辿った。 そのほか、中国浙江省・江西省にて実地調査(2019年8月)を行い、『夷堅志』関連の地名、作者洪邁の遺跡洪氏宗祠、洪邁墓と父洪皓の記念館を調査し、洪氏一族の後人が運営する洪氏協会の担当者を対象にインタビューを行った。 宮城県図書館にて『夷堅志和解』の書誌調査(2019年3月)を行い、同図書館青柳文庫蔵本と伊達文庫蔵本は同版であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおりに研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は続けて『夷堅志』の動物説話を抽出しデータ化して、『太平広記』と比較・分析する作業を行う。これまでの分析において、『夷堅志』の説話は江戸時代の小説のみでなく、医学書にも影響を及ぼしたことが判明した。今後は『夷堅志』の和訳本である『夷堅志和解』に見られる作者の評語を分析する作業を通して、『夷堅志』の日本における受容の実態と説話が変容する様相を明らかにする。このように中国と日本における『夷堅志』と『太平広記』の受容史を辿って、古代の中国の生物観が日本においてどう受容され、変容を遂げたかを考察することによって、中国と日本における生物観・自然観の異同を比較研究する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた『太平広記』『夷堅志』関連書籍の購入費が少なく済んだため、次年度使用額が生じた。新刊の『太平広記』『夷堅志』関連書籍の購入費として使用する予定である。
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