2018 Fiscal Year Research-status Report
紀伊半島熊野灘沿岸地域諸方言アクセント類型論の形成
Project/Area Number |
18K12362
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
平田 秀 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・対照研究領域, プロジェクトPDフェロー (60777613)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語アクセント論 / 日本語方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度、研究題目「紀伊半島熊野灘沿岸地域諸方言アクセント類型論の形成」に基づき、同地域諸方言についての現地調査・記述的研究を遂行した。 当該年度中、熊野灘沿岸地域の複数の地点で現地調査を実施した。平成30年12月に、三重県熊野市木本地区・三重県南牟婁郡御浜町阿田和地区にて、それぞれアクセント体系の解明をめざした現地調査を実施した。現地調査で得たデータにもとづき、木本方言は「式の対立をもつ多型アクセント」の体系をもつと現時点では結論づけられる結果となった。阿田和方言のアクセント体系については、現時点では不明な点が多く残り、今後のさらなる調査・研究が必要な状況である。また、同月には申請者による網羅的なアクセント調査を実施済みの三重県尾鷲市尾鷲地区にて、動詞の活用形について分節音とアクセントの双方の観察を行う調査、人名のアクセントの予備調査を実施した。今後、尾鷲方言についてのさらに発展的な記述研究を展開する予定である。
前述の尾鷲方言について、国際シンポジウム(Approaches to Endangered Languages in Japan and Northeast Asia: Description, Documentation and Revitalization)にて、ポスター発表 "On the accented moraic oral obstruent in the Owase dialect (Mie Prefecture, Japan)"を実施した。日本語諸方言においては一般に促音はアクセントの下げ核を担わないが、尾鷲方言においては促音が下げ核を担う例が観察され、通方言的に見て非常に稀な特徴を尾鷲方言がもつことをこの発表で指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度には、申請者がこれまでに現地調査を実施していなかった2つの地区(三重県熊野市木本地区・三重県南牟婁郡御浜町阿田和地区)にて新たに現地調査を実施した。 これにより、申請者は熊野灘沿岸地域の合計7地区で現地調査を実施済みとなった。同地域諸方言のアクセント類型論の形成に向け、さらに調査地区を増やして記述的研究を続行するものとする。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者が熊野灘沿岸地域諸方言のアクセント類型論の形成をめざした研究を今後推進するにあたって、まずは新たな地区にて現地調査を実施することが考えられる。 平成30年度までに、申請者は熊野灘沿岸地域の7地区にてアクセント調査を実施した。今後は、さらに調査地区を増やす予定である。新たに現地調査を実施する地点の選定にあたっては、金田一春彦(1975)『日本の方言 アクセントの変遷とその実相』に掲載の、熊野灘沿岸地域諸方言の分類を示した地図が有用であると考えられる。 また、現地調査を実施済みの7地区についても、アクセント体系の解明をめざす予備調査のみが実施済みの地点が複数存在する。そのような地点についても、アクセント体系の全容をとらえるとともに、さらに詳細な個別の現象(複合名詞アクセント、外来語アクセント等)を取り扱えるよう、現地調査を続行するものとする。 申請者が現地調査を実施済みの地点のうち、尾鷲市尾鷲方言については、アクセントについての網羅的なデータを取得している。今後は、アクセントとイントネーションの連関を観察するなど、これまでの記述的研究をさらに発展させる形での研究の遂行をめざす。
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