2019 Fiscal Year Research-status Report
過去分詞の動詞性と形容詞性-過去分詞形複合形容詞を手がかりに-
Project/Area Number |
18K12375
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
野間 砂理 琉球大学, 国際地域創造学部, 講師 (70724970)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドイツ語 / 過去分詞形複合形容詞 / 動作・状態受動文 / 過去分詞の素性 / 形容詞性と動詞性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、動作・状態受動文および過去分詞形複合形容詞の形成の可否をもとに、ドイツ語の状態受動文における過去分詞が形容詞化しコピュラ構文となっているのか、あるいは動詞的な素性を失っておらず、コピュラ構文における述語とは意味論上の差異を保持しているのかを調査することにある。 2019年度は育休を終え職場復帰した2019年10月に研究活動を再開した。まず、ドイツ語の動詞を辞書(DUDEN)およびコーパス(COSMASII)から収集し、Levin(1996)による動詞の意味分類(48種類)のうち、7つの意味に該当する動詞を抽出し、どの程度動作・状態受動文が実際の言語活動において使用されているかコーパス(COSMASII)を用い調査した。その結果、着色・切断・破壊・充足・を意味する動詞群では動作・状態受動文のみならず、状態受動文における項あるいは付加詞と過去分詞が結合し過去分詞形複合形容詞の形成も動詞の多義性の影響を受けることなく可能であることが判明した。次に、殺害を意味する動詞群は動作・状態受動文のみが形成可能であり、行為の結果として残されたものに対する質への言及がなされた場合も過去分詞形複合形容詞を形成することはできなかった。また、調査・捜索を意味する動詞群では、状態受動文の形成が阻止される移動の意味が加わった場合、動作受動文のみが生成されることが明らかとなった。 Maienborn(2007,2009)による分析では、過去分詞が表す結果状態はあくまで行為としての一時的な状態であるとされている。しかし本研究の調査結果では、創造を意味する動詞において、通常は状態受動文が許容されないにもかかわらず、永続を表す付加詞を挿入することで状態受動文が形成されるという反例が観察された。この調査結果について現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
育児休暇を終え2019年10月に職場復帰した。復帰後は1歳の子供が病気になることが多く、看病のため有給休暇を取らざるを得ず、当初の予定通りの研究成果(口頭発表1回、論文1本)は得られなかった。 6か月間の研究成果は2020年3月に開催された学会で発表し、現在はその成果についての論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は7つの意味の動詞群について実際の言語使用状況を調査した。2020年度は、状態受動文において永続性の意味を持つ付加詞との共起の可能性、活動時間の長さ、動詞の行為が完了した結果得られる成果物の質に主眼を置き、その他の動詞の意味についてもコーパス調査および分析を進める予定である。
Covid19の影響で発表を予定していた研究発表会が既に中止となったため、今年度の研究成果は、研究者と個別に意見交換した上で、主に論文発表によって結実させることを目指したい。
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Causes of Carryover |
産休・育休を終え、2019年10月1日付けで職場復帰した。二人の子供(4歳と1歳)を一人で養育しており、これまでの経験から職場復帰後の半年間は病児の看病で通常の研究活動を実施できないと判断し、研究の再開を半年先の2020年4月とした。そのため、2019年度の予算を2020年度以降に全額繰り越した。
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Research Products
(1 results)