2020 Fiscal Year Research-status Report
過去分詞の動詞性と形容詞性-過去分詞形複合形容詞を手がかりに-
Project/Area Number |
18K12375
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
野間 砂理 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (70724970)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 過去分詞 / 過去分詞形複合形容詞 / 状態受動文 / コピュラ構文 / 形容詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ドイツ語の過去分詞形複合形容詞を伴うコピュラ構文が、状態受動文と意味及び統語構造において平行であるという特徴を、これまで意味論および語用論の分野で意見の一致をみなかった状態受動における過去分詞と形容詞としての過去分詞をめぐる研究に取り入れることでこれら二つの構文を同時に分析することである。 2020年度は、Levinによる動詞のクラス分類48種の中から15のタイプを取り出し、それぞれのタイプに属する動詞の過去分詞形を含む構文をコーパスで収集した(faerben, schnitzen, zerstoeren, fuellen, bauen, ermorden, jagen,auftanken,aufessen, austrinken, erlegen, ausdenken, abheben, erbauen, errichten)。これらの動詞が、コピュラ構文、動作受動、状態受動文で用いられているか、そして受動過去分詞形の動詞性と形容詞性の区別がどこにあるかを調査し、Vendlerのアスペクト分類のうち、出来事の完結性(telicity)、変化後の結果状態と関連する「達成型」動詞が状態受動、過去分詞形容詞形を作りやすいという分析を示した。さらに、達成型においても、結果状態のあり方などで差が出るということを示した。Maienbornが「過去分詞が示す結果状態は行為としての一時的状態である」と指摘するのに対して、付加詞の意味特性によって状態受動文が永続的意味を持つ場合もあるという反例も提示することができた。 状態受動文の生成の可否を判断する際、活動動詞は内在的終了点を持たない点を除けば、達成動詞と時間的には同じ構造であるという特徴を十分に考慮し、研究を進めなければならないことも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度はコロナによる国と沖縄県独自の緊急事態宣言により、子供たちが3か月間保育園に通えなかったことが研究の進度に大きく影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の調査では、動作受動文と状態受動文が形成されるにも関わらず、一語化できない原因は何かを特定することができなかった。成果物の特徴の違い、活動時間の長さ、移動の意味が含意されているかどうかが関与していると考えられるので、今後も過去分詞形複合形容詞の生成にかかわる過去分詞の動詞性と形容詞性を調査する際、動詞の意味を恣意的に限定せず、網羅的に扱うことで、これらの問題を解明したいと考える。
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Causes of Carryover |
学会そのものが開催されなかったこと、また、Zoomによる研究発表により開催地(広島大学)に行く必要がなくなり、旅費を支出する必要性が無くなったことが主な次年度繰越の理由である。2021年度も学会の多くがオンライン開催の決定を下しているため、不足している書籍等の購入に旅費を充てる予定である。
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Research Products
(3 results)