2020 Fiscal Year Research-status Report
The Early Acquisition of Korean Morphology based on MLU and The Korean Morphological analysis
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18K12384
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
柳 朱燕 愛知淑徳大学, 教育部門・センター, 講師 (40647682)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第一言語習得研究 / 韓国語の幼児言語獲得過程 / 言語習得資料のコーパス構築 / MLU(平均発話長) / CHILDES |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、CHILDES(Child Language Data Exchange System)で公開されているRyuコーパスを利用し、MLUを基にして韓国語の基礎文法の中心に当たる助詞及び動詞の活用形態素の獲得順序を明らかにすることを目的とする。また、Ryuコーパスにおいて、形態素分析を行い、大量の自然発話データを効率的に分析できるようにシステムを構築することも本研究の目的である。 今年度は韓国語の基礎文法の習得に関して、助詞の獲得とテンス・アスペクトの獲得を中心に研究を行った。韓国語の助詞の獲得については、Ryuコーパスから抽出した3,723文を分析し、五つの助詞の習得順序は「主題nun/un」→「独立助詞(追加)do」→「主格ka/i」→「目的格lul/ul」→「所有格ui」であることが分かった。テンス・アスペクトの獲得については、韓国語の第一言語習得過程において「アスペクト仮説 (the Aspect Hypothesis) (Andersen & Shirai, 1994)」を検証した結果を、さらに、Distributional Bias Hypothesis(テンス・アスペクトにおいて親の偏った使用パターンが子どもの習得に影響を及ぼす)の観点から使用頻度を基に再分析し、論文を執筆、国際ジャーナルのJournal of Child Languageに投稿した。現在、査読中である。 Ryuコーパスの形態素分析研究に関しては、日本語コーパスであるJCHATの運営プログラムを入手し、JCHATのシステムを分析しながらRyuコーパスに適用する方法を探っている。コーパスの形態素分析が可能となるためには文法分析に加え、語彙辞書(lexical dictionary)が必要である。今年度は語彙辞書を作成した。次年度は文法分析プログラミングを完成させることを目標にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の課題は以下の二つである。 課題①「平均発話長(MLU)による韓国語の初期文法発達の解明」 課題②「韓国語の幼児言語コーパスの形態素分析」 課題①に関しては初期文法発達の項目として「助詞」と「動詞の活用形態素」を設定し、その発達過程を明らかにすることを具体的な研究課題にしていた。交付申請書に記載した研究計画のとおり「韓国語の助詞」における習得過程を明らかにしたが、まだ学会の発表や論文投稿が遅延している。2020年7月に予定されていたInternational Association for the Study of Child Languageの国際学会(開催予定地:アメリカ、フィラデルフィア)がコロナウイルス感染症の状況により1年延期されてしまい、研究成果の発表の場をまだ設けていない。今年度の計画である「動詞の活用形態素」に関しては、テンス・アスペクトの習得において過去形essと未完了アスペクトko/a issは習得過程を明らかにしたものの、残りの動詞活用形に関してはまだ分析中である。遅延の原因として考えられるのは課題②が順調に進まないこともある。課題②が先行しないと、述語の形態素分析が効率的にできないので、「動詞の活用形態素」に関する研究が進まない状態になるからである。 課題②「韓国語の幼児言語コーパスの形態素分析」に関しては、JCHATプロジェクトの責任者の協力を得て、JCHATのプログラムを分析することができた。Ryuコーパスの3人の幼児が発話した9,460tokenから抽出した単語をリストアップして名詞・動詞・形容詞・助詞・副詞・オノマトペの6種類に分類し、意味を英語に直して語彙辞書(lexical dictionary)を完成したが、文法の分析ができるようにプログラミングする作業は現在、進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は韓国語の第一言語習得過程におけるテンス・アスペクトの獲得」について、論文を執筆し、国際ジャーナルのJournal of Child Languageに投稿した。現在、1次査読の結果が送られ、内容を修正中である。来年度内には論文の出版ができるように進めていく計画である。また、「平均発話長(MLU)による韓国語の助詞発達過程」に関する研究結果はInternational Association for the Study of Child Languageという国際学会での口頭発表を予定している。今後、統語論的な発達過程に関する考察を追加し、「韓国語の格助詞の第一言語習得過程」を主題にした論文を執筆し、国際ジャーナルに投稿する計画である。 「韓国語の幼児言語コーパスの形態素分析」に関してJCHATの文法分析を通して韓国語の文法プログラム(Grammar)を作成する作業を来年度本格的に行う計画である。Ryuコーパスから3人の幼児が発話した9,460tokenを取り出し、語彙辞書を完成させたので、韓国語の文法プログラムができしだい、形態素分析は可能になる。来年度は文法分析プログラミング作業に集中し、韓国語文法プログラムを完成させたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては旅費と物品費の未使用が挙げられる。今年度7月にアメリカ、フィラデルフィアでの開催が予定されていた国際学会がCOVID19感染症の流行により1年延期されたため、参加にかかる旅費が未使用となった。また、国内学会においてもCOVID19感染症の流行によりオンライン開催に変わり、旅費の未使用となった。さらに、多数の国際学会がオンライン学会に開催方法を変更しており、旅費の未使用はしばらく続くと思われる。次年度使用額はオンライン学会での発表に備えパソコンと周辺機器を購入する計画である。また、来年度は本格的に「形態素のタグ付け」作業を進める予定である。韓国語の文法分析においては、日本語のJCHATのシステムを分析し、韓国語にそのシステムを適用するように研究している。しかし、JCHATのシステムもかなり複雑な体系を持ち、データの量も少なくはない。従って、次年度は人件費を使い、複数の人が分析したデータのエラーなどを探す作業を進めていきたい。また、本研究の成果をJournal of Child Languageという国際ジャーナルに投稿する計画で、論文投稿に伴う経費も支出する予定である。
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