2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Japanese Indeterminate Pronoun and Its Reduplication
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18K12386
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
工藤 和也 龍谷大学, 経済学部, 講師 (30736096)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不確定代名詞 / 重複表現 / 語彙化 / 慣習的推意 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生成文法の枠組みに従って、「誰々」や「何々」などの日本語の不確定代名詞重複表現の意味的・統語的特徴を明らかにすることである。 本年度は、不確定代名詞重複表現の歴史的成立過程の解明および意味的特徴の理論的な記述を試みた。 前者については、日本語の古典文学作品のコーパスを使用し、当該表現の使用例を観察することにより、当該表現が歴史的にいくつかの段階を経て現在の用法を獲得していることを明らかにした。具体的には、現代語の「誰々」や「何々」には、「不特定の複数の事物」を表す用法と「不特定の単数の事物」を表す用法の2種類があるが、複数型の成立は平安時代と早く、日本語の重複表現が、元来、「複数の事物」を表していたことと呼応している。一方、単数型の用法は、江戸時代になってから登場しており、比較的新しい使用例であると考えられる。本研究では、この複数指示の用法から単数指示の用法への意味の変化が、当該表現の語彙化(lexicalization)の結果であることを示すいくつかの証拠を発見した。 後者については、当該表現の意味を形式意味論の観点から見つめ直すことにより、当該表現(単数型)の成立に、文内の慣習的推意(conventional implicature)の有無が関与している可能性を提案するに至った。これにより、当該表現の統語的分布を閉鎖引用節内に限定する先行研究との差異が生じ、今後、追求していくべき課題がより明確化することになった。ただし、慣習的推意は、現在、意味論で多くの議論が交わされているテーマであり、不確定な要素も多いことから、今後はより緻密な分析が求められる。なお、当該表現と類似の他言語の表現の成立にも慣習的推意が関わっているとする論考がいくつか見られることから、慣習的推意を本研究の軸とすることで、当該表現の類型論に向けた道筋が開かれたことは付記に値する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初予定していなかった方向にまで研究の裾野が広がり、その意味では研究計画以上のことが達成されたが、後半は新型コロナウイルスの影響により、海外における研究活動や情報収集ができなくなったため、当初の計画以上に研究が進展しているとは言い難い状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は不確定代名詞重複表現の類型論的研究を行う予定である。ただし、新型コロナウイルスの影響により、海外における研究活動や情報収集ができない場合は、国内での研究活動に集中し、これまでの研究成果の発展的な整理や総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、本年度後半に予定していた海外における研究活動および情報収集を中止せざるを得なくなったため。次年度使用額は、当初の研究計画通り、物品(主に図書資料)の購入と出張旅費に使用する。
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Research Products
(4 results)