2019 Fiscal Year Research-status Report
診療場面における情動表出を伴う疑問文発話の認知語用論的研究
Project/Area Number |
18K12387
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
後藤 リサ 関西外国語大学, 英語国際学部, 講師 (00712100)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 診療談話 / 情動 / 疑問文発話 / 関連性理論 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、疑問文発話が有する問いかけの機能と情動との相互作用を分析するにあたり重要な役割を果たす「共感」の認知について、関連性理論の認知モデルを適用した場合の利点について明らかにし、その成果を医療現場に還元することを目指すものである。本年度は、共感の認知を、語用論的推論過程にいかに位置付けるかという問題提起をし、沈黙や発話のトーンなども考慮に入れた発話分析を行った。この成果の一部は共著論文の形で公表されている。本年度の研究活動内容詳細は、以下の2点にまとめられる。 (1)診療談話場面において収録した疑問文発話の分析を通して、疑問文発話が本来有する「問いかけ」の機能と、様々な情動(驚き、喜び、怒り、笑い、等)との相互作用のさらなる考察と検討を行うとともに、(2)本研究の理論的基盤となる関連性理論の「情動効果」にかかわる認知モデルを発展させることを目指し、関連学会での発表を行い、他の研究者たちと意見交換する場を得、その成果を雑誌論文などにも発表した。特に、(1)については昨年度から引き続き、(医療従事者である)研究協力者の開催する親子の会において過去に収録された言語資源の提供を受け、分析対象とした。また別の研究協力者から提供を受けた診療談話の録音データについても、昨年度に続き分析対象とした。これらの言語資源の分析と並行して、診療談話(サンプル含む)を収録している先行文献から、言語資源を抜粋し、電子データ化し、疑問文発話の分類・整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より引き続き、研究協力者の主催する医療関係の集いの運営に参加し、現場で当事者の一人として、活発なコミュニケーションの場を経験する機会を得た。また、この集いとは別の時点で収録された類似の会の会話のインタラクションの記録(文字起こしデータ)の提供を受け、分析対象とした。さらには、別の研究協力者により提供を受けた収録された会話音源についても分析を行った。現在使用可能なこれらの言語資源については、当初の計画通りに分析を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記概要にて記した、電子データ化した先行文献からの言語資源に基づいた分類項目を、録音された診療会話のデータ分析に適用する。分析結果は、医療従事者を含む複数の研究協力者との勉強会を通じて共有し、ここで得られた知見を、医療コミュニケーションの研究会や学会、および専門誌への投稿を行うという方法により、随時公表する予定である。
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Causes of Carryover |
言語資料の一部の文字起こしのために予定していた人件費が不要になった。次年度も引き続き人件費は予定通りに計上しない可能性が高く、余剰分は国際学会発表時の経費に充てる予定である。
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Research Products
(10 results)