2018 Fiscal Year Research-status Report
分裂能格性の比較統語研究:名詞化と動詞の意味的特性を中心とした実証研究
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18K12388
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
今西 祐介 関西学院大学, 総合政策学部, 講師 (80734011)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分裂能格性 / 名詞化 / 活格型配列 / マヤ諸語 / 喜界語 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、マヤ諸語内及びマヤ諸語と他の能格言語や喜界語の比較統語研究を通じて、分裂能格性の発生メカニズムの研究を行った。具体的には、分裂能格性が先行研究で主張されてきたような独立した規則から導かれるのではなく、各言語の統語的要因、特に名詞化節の統語的特性と動詞の意味的特性から派生される副次的な現象であることを明らかにすることを目指した。マヤ諸語の名詞化と分裂能格性に関する学術論文が国際学術雑誌(Natural Language and Linguistic Theory, Springer)に掲載された。動詞の意味的特性と分裂能格性に関しては、喜界語(上嘉鉄方言)のフィールド調査を行い、当該言語が活格型配列を持つかを検証した。本調査の結果、当該方言には活格型配列は見られないことが明らかになった。 また、当初の計画には無かったが、格配列との関連で喜界語の名詞句の研究も行い、格標示と名詞句削除の有無の相関関係を調査した。さらに、消滅危機言語である喜界語の言語データを映像や地図とリンクできるようなデータベースの構築を始めるための予備調査も行った。 本研究の特色は、分裂能格性に関する課題を解決するために、先行研究において見過ごされてきた、名詞化現象に関する詳細かつ緻密な分析を用いる点である。この点に関して、今まで研究代表者がフィールドワークと文献調査を基に蓄積してきたカクチケル語を含むマヤ諸語の名詞化に関する研究をさらに推し進めることにより、先行研究では議論の俎上に載せられることがなかった言語からの知見を加えることが可能となる。また、今まで分裂能格性という観点から分析されることがほとんどなかった喜界語を取り上げることにより、分裂能格性に関わる別の統語的要因である動詞の意味的特性の研究に対しても新たな視座を加えることが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マヤ諸語の名詞化と分裂能格性の研究に関する学術論文がまとまり、国際学術雑誌に掲載されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
喜界語(上嘉鉄方言)に活格型配列が存在しないことが明らかになったため、動詞の意味的特性と分裂能格性に関する調査計画の変更を検討する必要がある。一方、喜界語の名詞句内における格標示と名詞句省略現象に関する興味深いデータが見つかったため、他の琉球諸語との比較統語研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた支出用途枠(「旅費」等)での支出が少なかったため、次年度使用額が生じた。 今回生じた次年度使用額は、次年度の現地調査費用等に充てる予定である。
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