2020 Fiscal Year Research-status Report
分裂能格性の比較統語研究:名詞化と動詞の意味的特性を中心とした実証研究
Project/Area Number |
18K12388
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
今西 祐介 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (80734011)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 能格性 / 名詞化 / 活格型言語 / マヤ諸語 / 琉球諸語 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに引き続き、マヤ諸語と喜界語の比較統語研究を通じて、分裂能格性の発生メカニズムに関する研究を行った。具体的には、分裂能格性が先行研究で主張されてきたような独立した規則から導かれるのではなく、各言語の統語的要因、特に名詞化節の統語的特性と動詞および名詞の意味的特性から派生される副次的な現象であることを明らかにすることを目指した。 本年度はマヤ諸語の名詞化に焦点を当て、これまでに研究代表者が行ってきたカクチケル語の名詞化を中心に研究を推し進めた。特に、Imanishi(2014, 2019)で明らかになった、名詞化の外項に関する制約を原理的に説明できるメカニズムを検討した。当該制約は分裂能格性と密接に関わっているため、理論的説明が可能になれば分裂能格性の発生メカニズムの解明にも寄与することが期待される。 また、分裂能格性という観点から分析されることがほとんどなかった喜界語を取り上げることにより、分裂能格性に関わる別の統語的要因である動詞および名詞の意味的特性に対して新たな視座を加えることを目指した。 本年度も昨年度同様、喜界島におけるフィールド調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため実施することができなかった。そのため、本年度はこれまでに得られた喜界語のデータの整理と再考察を行った。その結果、動詞や名詞の意味的特性に加えて、談話情報や発話状況が格標示(特に、ゼロ格の分布)に影響を与えている可能性が明らかになった。今後は、世界の諸言語との比較を通して、喜界語における分裂能格性およびゼロ格の分布に関する研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため当初予定していたフィールド調査が実施できなかった。そのため、喜界語に関する研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続くことが予想されるため、これまで得られたデータの再考察と文献調査を中心に研究を進めて行く予定である。可能であれば、オンライン形式で調査を実施することも検討する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、当初予定していた支出用途枠(「旅費」等)での支出ができなかったため、次年度使用額が生じた。 今回生じた次年度使用額は、次年度の物品費やオンライン調査での謝金等に用いる予定である。
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