2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の消滅危機言語を対象とした大量の言語資料収集・蓄積方法に関する基礎研究
Project/Area Number |
18K12390
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
麻生 玲子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特任助教 (20810667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 消滅危機言語 / 資料収集・蓄積 / 地域コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本の消滅危機言語を対象とした大量のデータ収集・蓄積方法の基礎研究を行う。日本を含み、世界では多くの言語が消滅の危機に瀕している。一方で、人類の言語認知や言語習得といったメカニズムの解明には、言語の多様性の記録が不可欠である。従って、言語の多様性の記録は急を要する。これまで言語資料の収集・蓄積は、主に研究者が主体となって行ってきた。将来的にも研究者が主体となり、消滅の危機にある言語・方言の資料収集・蓄積を行う場合、収集可能な言語資料の量と収集期間に期限がある。上記の問題を解決するために、本研究では、消滅危機言語が話されているコミュニティメンバーと研究者が協力し、持続可能な形で行える言語資料収集(録音)方法の基礎研究を行う。
本年度は(1)南琉球諸語の方言話者による、言語資料収集の実験(八重山語、宮古語)(2)語彙集の作成(3)調査語彙カードの作成を行った。以下で詳しく述べる。
(1)新型コロナウイルスの感染拡大により、人と人との接触を最小限に抑える必要があったため、本年度は方言話者本人が直接言語資料を蓄積する方法で実験を試みた。これまでに築き上げたネットワークを通して、延べ10人程度の参加があった。(2)(1)で収集した語彙資料を利用し、研究協力者であるセリック ケナン氏(国立国語研究所)の協力のもと、語彙集を作成し、話者の方々に返送した。(3)引き続きイラストによる調査語彙カードを作成した。本年度は予定していた出張が取りやめになったこともあり、イラストカードの作成を早めた。300語のイラストが完成し、昨年度までと合わせて600語のイラストが完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1)南琉球諸語の方言話者による、言語資料収集の実験(八重山語、宮古語)(2)語彙集の作成(3)調査語彙カードの作成を行った。
当初予定していた沖永良部島でのワークショップ(「なりきり!方言研究者」ワークショップ)の実施は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてか参加者が集まらなかったため、中止した。その代わりに、方言話者本人が自ら言語資料を蓄積するワークフローを作成し、延べ10名程度の参加を得て、言語資料収集の実験を行った。録音機等の取扱い説明書・注意事項等を新たに作成した。本年度は方言が話されている地域でのワークショップは行えなかったが、制限がある中で可能な言語資料収集法を試みた。プロジェクト全体として、実験数が増え、イラストカードは予定よりも多く完成したことを踏まえると、全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に行うことは主に次の3点である。(1)引き続き、方言話者本人が言語資料を蓄積する方法の実験を行い、より精度の高い資料を得られるような方法を開発する(2)イラストカードをすべて公開し、幅広く利用してもらえるようにする(3)実験実施候補地でのネットワークづくりを行う。(3)に関しては研究代表者が沖縄県北部地域の大学に着任したことにより、当該地域でネットワークが広がっていくことが予想される。従って(1)の参加者も増えることが予想される。これまで蓄積してきた説明資料等をアップデートし、最終的に様々な場所で方言話者が参加および使用できるよう実験の「パッケージ化」を行う。
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Research Products
(2 results)