2020 Fiscal Year Research-status Report
消滅の危機に瀕する八丈語の音声談話資料の拡充と継承のための教材開発に関する研究
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18K12391
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
三樹 陽介 駒澤大学, 文学部, 講師 (40614889)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 八丈語 / 消滅危機言語 / 音声談話資料 / 記述文法 / 継承教育 / 音声 / 格 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度はCovid-19の蔓延と感染拡大防止のため、当初予定していた臨地調査が行えなかった。そのため、既に収集済みのテキストデータの分析を進めるとともに、八丈語継承活動に関する資料をまとめる作業に終始した。データが十分とはいえなかったため、当該年度での論文化は見送り、オンライン開催された学会等で発表した。令和2年度は国際学会での発表計画があったが、学会の開催の不確実性等を考慮し見送った。
令和2年度の本研究課題に関わる研究成果として、国内学会での発表2件(オンライン)、国内講演を1件、報告を1件、書籍(分担執筆)の出版1件を行なった。書籍『実践方言学講座』第2巻第9章に消滅危機言語の継承活動について、研究者と地元自治体との連携をテーマに八丈島での実践例をまとめた。本書に関連して、10月に行われた第6回実践方言研究会において研究者側の視点に基づいた発表を行なった。また、国立国語研究所の消滅危機言語プロジェクトの成果発表会において、ニ格を伴う形容詞についてデータを再検討し、問題点を明らかにした上で詳細な分析を加えた。11・12月には八丈町で講演と研究成果報告を行なった。1件は東京都の依頼によるもので、島内教職員のために消滅危機言語概論と、八丈語の特殊性と言語学的価値、継承への取り組み方法について講演した。もう一件は一般島民向けのもので、これまでの調査で明らかになった八丈語の特徴について報告した。なお、本報告は課題番号16H03423の最終報告会での報告と連動する形で行なった。
以上の成果は、より現実の八丈語に近い形で再建できるように記述・保存することに貢献するものと考える。八丈語は先行研究が比較的豊かであるが、まだ、記述が疎である部分がみられる。そういった部分を補充し、また、まだ気づかれていない文法的特徴についてもできる限り記述できるよう、記述の精密化を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の蔓延と感染拡大防止のため令和2年度は調査が行えず、文法記述や学習教材作成に遅れが出ている。一方で、テキスト分析は進めており、収集済みのデータを基に、不完全ながらも文法記述の精緻化等を進めている。また、これらの作業により、不足するデータや今後収集すべきデータについて検討することになり、今後の調査方針がより明確になった。今後は不足分を中心に、調査の再開が可能となればデータを収集して補完していく計画である。令和3年度は最終年度となるため、(簡易)記述文法書を作成し、暫定版という形ではあっても公開していくことを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もCovid-19の収束状況と社会状況によって活動の幅は大きく異なってくると予想されるが、基本的にCovid-19の感染拡大が収束しなければ調査再開が叶わず、データの不足を補うことができない。従って、収束が長期化するようであれば、その時点で収集できているデータと先行研究の記述を基に、規模を縮小し、暫定的であっても成果物をまとめていく。ただし、より詳細なデータ収集を目指すことは言うまでもなく、データ分析の網をより詳細なものにし、理論的成果を出していきたいと考えている。なお、話者とは密接に連絡をとり、短期間で十分な調査が行えるような環境を作ってきた。方法論的に最終年度以降の研究の進展に大いに役立つものと考える。
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Causes of Carryover |
Covid-19の蔓延と感染拡大により、当初予定していた臨地調査が行えず、予定していた国際学会の開催が延期となったため、旅費相当額が消化できなかった。本来は令和2年度をもって研究期間終了の予定であったが、やむをえず延長申請を行ない、未消化分を次年度繰越金として使用することとした。繰越金については、臨地調査の旅費と研究成果還元のために使用する。
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