2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on the language systems of the neighboring dialects in Uken village of Amami Oshima
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18K12394
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
新永 悠人 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特任助教 (50812244)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 書き起こし / 自然談話 / 文法 / 語彙 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の準備を踏まえ、本年度は鹿児島県宇検村の須古集落の方言調査を行った。多地点を順次調査していく本課題において、本年度に須古方言を選んだ理由は、以下の条件を満たす話者が同方言には1名しかいないためである。その条件とは、(1)同地で生まれ、(2)同地で言語習得期を過ごし、(3)同地で大人になってからの大部分を過ごし、(4)両親も同地の出身であり、(5)現在65歳以上であり、(6)聴覚・発音に問題がないこと、の6点である。須古方言はこの条件を満たす話者が1名しか存在しないことから、本年度の調査対象方言は須古方言とした。 まず、調査実施期間は以下のとおりである。2019年5月7日から5月31日(於奄美大島)、同年7月1日から13日(於大阪)、同年9月11日から20日(於奄美大島)、同年10月5日から11日(於奄美大島)。7月は当該話者が大阪に一時的に滞在することから、大阪での調査を行った。 次に、調査内容は、語彙調査、文法調査、自然談話の収録・書き起こしである。加えて、関係者がカセットテープに録音していた須古方言の音源のデジタル化も行った。現時点での調査収録語彙は約400語、収録例文は約140例文である。文法調査は肯否疑問、人称代名詞、格助詞、副助詞を中心行った。自然談話は、10分強の昔話(現地の妖怪であるケンムンの話)の書き起こしが完了した。また、1時間半の会話(4名の参加者)のうち、30分ほどの書き起こしが済んでいる。 現地における成果還元(アウトリーチ)の一環として、本調査結果の一部を利用した講演を鹿児島県宇検村において行った。 年度末(3月)に最終的な補足調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス(COVID-19)によりそれは延期された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合計55日間の調査(但し、調査地への移動日も含む)により、調査地点における一定のデータを集めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は話者との対面調査が必要不可欠である。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を避けるためには、そのような調査は実質上不可能である。伝統方言の話者は基本的に60代後半以上の高齢者であり、感染のリスクが非常に高い。また、この年代に対しては(少なくとも、私が調査対象とする人々においては)遠隔通話ソフトなどを使って調査することは非現実的である。昨年度の3月に予定していた調査も急遽中止となり、現在はデータの整理に研究時間を当てている。 新型コロナウイルスの感染収束、およびワクチンの開発・普及までは調査が難しいことを考えると、現状況では科研の研究実施期間の延長を申請せざるを得ない。
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Causes of Carryover |
旅費が1万5千円分ほど少なくて済んだことが理由である。もし次年度に調査可能な状況があり得たら、旅費に充てる予定である。
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