2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12395
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
佐藤 久美子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (60616291)
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Project Period (FY) |
2019-02-01 – 2024-03-31
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Keywords | 音調 / イントネーション / アクセント / 平坦音調 / 日本語諸方言 / 日琉諸語 / 疑問・不定表現 / 類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はコロナ禍により、計画していた現地調査が行えなかったため、現地調査に代わってオンラインでの遠隔調査を実施した。また、これまでの研究成果の公開に重点を置いた活動を行った。 調査は熊本県八代市方言を対象とし、疑問・不定表現(「誰/何/どこ」・「誰も/何も/どこも」等)のアクセントの交替現象と、疑問・不定表現を含む句(「誰のりんご」・「誰のりんごも」等)と節(「誰が食べたか(知ってる)?」・「誰がたべても(いい)」等)に実現する音調を調べた。調査結果として、不定表現でアクセントが交替し、平坦な音調が実現すること、不定表現を含む句・節の一部にも同様の平坦音調が実現することを明らかにした。更に、句・節の平坦音調の実現については、高齢層話者と若年層話者で許容範囲が異なる可能性があることが分かった。 研究成果は次のように公開した。(i)アクセント体系の異なる方言間で疑問・不定表現の音調特徴を対照し、そのバリエーションを記述した論文を公刊した。(ii)同一のアクセント体系を有する西南部九州の諸方言(上述の八代市方言を含む)において、疑問・不定表現の音調に細かな異同があることを明らかにし、学会発表した。(iii)近畿方言および琉球語のアクセント研究を専門とする研究者の協力を得て、地域・方言を大幅に拡充し、日琉諸語における疑問・不定表現に見られる音調特徴の類型化を試みた。協力者と共にワークショップを企画し、これを学会発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により現地調査再開の目途が立たない状況であるが、一部の地域でオンラインでの遠隔調査が可能となったため、研究の遂行に必要なデータを得ることができた。 近畿や琉球のアクセント研究の専門家の協力を得て、分析のための新たなデータが提供された。また、協力者との共同発表を通して、日琉諸方言におけるイントネーションの類型化が進み、多様性の実態と幅が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまでに提案した類型化の枠組みを検証することによって、日琉諸語におけるイントネーションの類型論を構築していく。方策としては、以下の二つである。 1. データの拡充による検証 十分な分析が進んでいない東北と北陸の方言データを組み込み、類型化が可能であるかどうかを明らかにする。 2. イントネーション理論に基づく検証 現在の枠組みでは、類型化のためのパラメータとして、音調実現の「要因(疑問表現及び不定表現)」と「範囲(語・文節・句・節)」の二つを設定している。これらのパラメータの在り方が、イントネーション産出のための音韻理論において妥当であるかどうかを議論する。
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Causes of Carryover |
2021年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の取り組みのため、現地調査が行えなかった。そのため、調査旅費の支出がなく、次年度使用額が生じた。 現在も予断を許さない状況ではあるが、少しずつ現地調査再開の目途が立ってきている。主な使用計画は以下の通りである。(1)2021年度に行えなかった分を含めた現地調査実施のための旅費、(2)これまでに蓄積されたデータの整理と入力補助のための人件費・謝金、(3)国際学会発表のための英語論文校閲費。
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Research Products
(4 results)