2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Study of the Universality of Agreement and Syntactic Changes in English and Japanese
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18K12409
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三上 傑 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (60706795)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Strong Uniformity / 素性継承システムのパラメータ化 / 文法的一致 / 通時的研究 / 共時的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、Miyagawa(2010,2017)により提唱されているStrong Uniformityと素性継承システムのパラメータ化の枠組みの下、英語における統語構造の通時的変化に関する実証的研究を実施した。具体的な分析対象としては、英語のThere受動文を取り上げた。当該構文をめぐっては、後期中英語期に観察されていた語順の多様性が、初期近代英語期を境に消失したとされる。この許容可能な語順パターンの通時的変遷に対して、本研究ではThere受動文が「存在」を表す本動詞BEの補部として「結果的状況」が選択された複文構造を有し、その補文内で主語移動が適用されるとする派生を提案した。そして、後期中英語期における語順の多様性と初期近代英語期以降のその消失が、当該時期における主語移動の適用可能性の相違に還元されると主張し、後期中英語期における文献調査に基づき、その妥当性を立証した。 また、この実証的研究に加えて、前年度の研究で得られた共時的知見と通時的知見を融合させる形で、さらなる理論の精緻化も試みた。具体的に、前年度実施した日英語対照研究では、焦点卓越言語に分類される日本語において定形節が必ずしもフェイズを形成しないという言語事実に基づき、主語卓越言語と焦点卓越言語間における定形節のフェイズ性に関するパラメータ化という新たな見方を提示した。また、通時的には、英語の統語構造が後期中英語期に焦点卓越型から現在の主語卓越型にパラメータ変化を起こしたことを明らかにした。当該年度は、これらの知見に基づき、焦点卓越言語として分析される古・中英語では日本語と同様に、定形節が必ずしもフェイズを形成せず、定形節内からの繰り上げ操作の適用が許容されていたとする理論的予測を導き出した。なお、本仮説の妥当性の検証作業については、次年度以降本格的に着手する予定である。
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Research Products
(2 results)