2018 Fiscal Year Research-status Report
日本語学習者の補助動詞及び助詞の誤りに対する口頭訂正フィードバックの効果の検証
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18K12421
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
高橋 早千江 (菅生早千江) お茶の水女子大学, 国際教育センター, 講師 (30777876)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リキャスト / アップテイク / 刺激回想法 / 認識 / 助詞 / 敬意表現 / プライム産出 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目(平成30年)には、タスクの精査の過程で、「補助動詞・助詞」としていた対象を、「敬意表現における補助動詞」および「同じ場面で共起する助詞」と、対象を絞ることにした。その間に行った資料調査を、教材分析の形で、ポスター発表した。(発表題目:初級教科書における「尊敬語の使い分け」「謙譲語の2分類」の取り上げ方-留学生に対する有効な明示的・暗示的指導の提案に向けて-(2018年10月、於お茶の水女子大日本言語文化学研究会)) この発表では、尊敬語の「(ら)れる」および「お~なる」では、敬意のレベルに差があるとされているが、教科書ではその敬意のレベル差を会話の相手や話題の人物の社会的レベルを変えることで表現していることを明らかにした。また、2007年から2つに分類されるようになった謙譲語については、謙譲語Ⅱの扱いに工夫が見られるものもあることを報告した。 当該調査は、次に述べるパイロット調査の処遇に反映されている。2019年3月には、パイロット調査として、ポーランドの大学において日本語を学ぶポーランド語母語話者16名を実験協力者としてデータ収集を実施した。処遇は計画の通りで、調査者と対象者の1対1のタスク、誤りにはリキャストで訂正、やり取りを録画し刺激回想インタビュー行う、という手順で実施した。 分析はまだ半ばであるが、その結果、敬語を一度リキャストで訂正されると、対象者はほかの敬意表現もプライム産出しようとするところが観察されたこと、しかしながら、その成功は習熟度によって異なるだろうということ、補助動詞の使用の細部に母語の影響が見られている。引き続き質的な分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の1年目(平成30年)には、後述の3点を実施計画に含めた。本研究におけるタスク一式の暫定版を完成させ、国内でパイロット調査を実施すること、および年度末(平成31年3月)にデータ収集予定大学を訪問し、準備およびパイロット調査を実施すること、実験計画及びパイロット調査を、研究会で発表することである。 計画は、おおむね順調に実施に移すことができた。タスクの精査の過程で、「補助動詞・助詞」を、「敬意表現における補助動詞」と同じ場面で共起する助詞と、対象を絞ることにした。その間に行った資料調査を、教材分析の形で、ポスター発表した(2018年10月、於お茶の水女子大学日本言語文化学研究会)。 2019年3月には、パイロット調査として、ポーランドの大学において日本語を学ぶポーランド語母語話者16名を実験協力者としてデータ収集を実施した。処遇は計画の通りで、報告者は調査者と1対1で、敬語の補助動詞(~ていらっしゃる、~ておる、など)の使用を誘出するタスキを実施し、誤用に対してリキャストで訂正するというものである。このやり取りを録画し、それを刺激剤として再生し、リキャストを受けた場面では、その調査者の介入をどう感じたかを語ってもらい、分析対象データとする、というものである。 計画が反映されなかったことは、事前と事後のテストを実施し、処遇の効果を確認するという点である(現地における授業との兼ね合いによる)。 なお、本パイロット調査の知見を報告すべく、9月の EAJS(Eurpean Association of Japanese Studies)にエントリーをした。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年のパイロット調査のデータは、まだ分析半ばである。途中の段階で報告可能なところについては、EAJSで報告するために分析を進めている。そこで報告するプライム産出の件以外にも、知見の報告を試みることを目指す。その結果については、英語のジャーナルへ投稿することを課す。 2019年のパイロット調査においては、プレポストテストデザインで効果を検証することができなかった。次は、現地の協力大学との連携についても確認し、2019年度の本調査においては、現地の授業に支障をきたさない範囲で1クラス全体の協力を仰ぎ、プレポストテストデザインでの効果の検証を行いたい。時期的には、2019年11月、あるいは2020年3月に実施することを検討中である。そのための測定タスクの検討を緻密に行うこととする。 報告者が「リキャストと対象文法項目」に関するレビューを発表してから、すでに数年たっている。この間のリキャストに関する研究をレビューするほか、「刺激回想法を実施した研究の精読、および「プライム産出」に関する研究の精読など、先行研究をまとめ、2020年度に実施するタスクの実施妥当性、および実施にかかる信頼性を高めることが肝要と考える。 次に収集したデータは、ヨーロッパ日本語教師会、あるいは応用言語系の学会で英語で発表したい。さらには英語で論文執筆をし、英語でのジャーナルに投稿することを目指す。
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Research Products
(2 results)