Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 海外在住の「日本につながる子ども」を対象とし, 継承語である日本語の育成を目指す保護者主体の小規模なグループへの参加を通して, 子どもたちがどのように日本語を習得しているのかを考察し, 複雑な言語体系を有する子どもたちの言語使用を明らかにすることを目的としている. 最終年度である2020年度は, (1) 2年間に及ぶ調査結果を学会, 研究会等で発表するとともに, (2) 論文の執筆・投稿を行った. また、(3) 継承語教育に携わる教育者, 研究者との情報交換を積極的に行い, 新たな人的ネットワークの構築を試みた. さらに, (4) 海外在住の保護者向けの冊子を発刊し, 継承語としての日本語教育の重要性を広く発信することができた. (1)に関しては, 2019年に実施したフィールドワークによって収集したデータを, 質的データ分析ソフトウェア(MAXQDA)によりコーディングし, 保護者の意識や, コミュニティ内での日本語の使用状況・学習状況を多角的に把握することができた. (2)については, 学会・研究会で4件の口頭発表を行い, 2本の論文を投稿中である. (3) では, 主に東京移民言語フォーラム(TAFIL)を母体とする研究グループで情報の共有, 発信を行い, 本研究に関して大きな進捗を得ることができた. 2021年度からは外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同研究員として, アイデンティティという側面から継承語研究に取り組む予定である. (4)については, メルボルンで活動する継承日本語教育を目的とした学習コミュニティ「あおぞら食堂」の運営メンバーと共に, 海外在住の保護者向けの小冊子を発行し, 継承語教育グループを発足させるための実際的な準備や手続き, 活動のアイディアなどを広く発信することができた.
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