2019 Fiscal Year Research-status Report
小学生から中学生の語彙サイズはどのように伸びていくのか?
Project/Area Number |
18K12438
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
佐藤 剛 弘前大学, 教育学部, 講師 (40784038)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テスト開発 / 語彙サイズテスト / 小学校英語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、初級英語学習者である小学生から中学生の語彙サイズの実態と、その伸長の過程を明らかにするものである。最終的には、小学生と中学生のそれぞれを対象とした標準化されたテスト開発を行い、小学生と中学生を対象にした、語彙サイズの実態調査を行うこと、さらには、開発したテストをウェブ上で公開し、広く教育と研究で活用してもらうことを目的としている。その2年目にあたる2019年度は、研究実施計画書に則って、主に以下の2つの調査研究を実施した。 まず、調査1として、インターネット上で研究協力を募集することで、協力校を県内だけでなく、全国に拡大し様々なバックグラウンドをもつ被験者のデータを収集し、そのデータをもとに、リストおよびテストの修正・改善を行った。さらに、これまでは語彙の頻度とrangeをもとにリスト化し、そこから語彙サイズテストのテスト項目を選択していたが、ラッシュモデルから得られる項目困難度を等価することによって得られる数値をもとに語彙リストの並べ替えを行う形式に変更した。これにより、より児童・生徒が感じる語彙の難易度に近い形の語彙リストを作成することができると考えられる。 次に、調査2として継続的に調査参加を依頼している協力校のデータを分析することで、小学校は英語を教科として学習する高学年2年間の、中学校は3年間の、同一被験者集団の語彙サイズの伸長の過程の縦断的な検証を行った。その結果、小・中学校ともに学習者の語彙サイズは、一定のペースで継続的に伸びていくのではなく、語彙のレベルによって、急激に伸びる時期と、語彙の伸長が停滞する時期とを繰り返すことを明らかにした。その結果をまとめたものを国際学会で研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、小学生と中学生を対象とした語彙サイズテストの開発を行い、そのテストを用いて、小学生と中学生の語彙の実態を明らかにし、教材作成や指導の基礎データを得ることを目的としたものである。2018年度の課題を受けて、2019年度は試作版の語彙サイズテストの概要の公開と研究協力校の募集用のウェブページ作成し、受験の申し込みをインターネット上で行った。その結果、全国の小・中学校から受験の希望と研究協力の申し出があり、青森県内だけにとどまらない幅広いバックグラウンドを持つ、多くの調査協力者のデータを得ることができた。 そこから得られたデータをラッシュモデルを援用して分析することで、語彙リストの修正することも継続して進行中である。具体的には、これまでは、主に語彙の頻度とrangeのデータを基準にリスト化されていたものを、ラッシュモデルから算出される項目困難度の等価を行うことにより、語彙リストの重みづけを調整したリスト化により、学習者の感じる難易度により近いものにすることが可能になった。 さらに、これまで継続的にテスト協力いただいている学校のデータから、中学校は3年間の、小学校は英語を教科として学習する高学年2年間の語彙サイズの縦断的な伸長についての研究をまとめ、特に中学校の研究成果については語彙研究では最高水準の国際学会に採択され、研究発表を行った。また、小学校・中学校ともに研究結果を論文にまとめ、海外の研究紀要にそれぞれ投稿した。現在、査読結果待ちである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の3つの調査を実施する。 ①小学校・中学校の語彙サイズテストの協力校を継続的に募り、データをさらに収集することで、リストおよびテスト開発を継続する。 ②リストおよびテストの開発過程、そこから得られた小・中学校を通した語彙の縦断的伸長の過程に関する研究結果をまとめ、全国および海外での学会での研究発表を行う、また、積極的に論文を投稿する。 ③最後にすべてのデータ、調査結果を総括し、より妥当性・信頼性の高い語彙サイズテストを開発し、それを今後、広く小学校と中学校の英語教育の研究と教育に活用してもらうために、開発・改良した最終版の語彙サイズテストは小学校用・中学校用あわせて、アプリケーション化し、紙媒体のテストと併せてネット上に一般公開する。 課題としては、小学校は2020年度から、中学校は2021年度から新学習指導要領が施行となり、それに伴い教科書が改訂となる。特に今回の改定では小学校で英語が教科として実施されるものであり、それにより小学校・中学校ともに指導される語彙数が、本研究で開発中のリストと比較して大きく増加することが予想される。ただし、本研究は2020年度が最終年度であるので、小学校については、検定教科書の語彙をできるだけ反映することで対応し、中学校については次の研究課題として改めて申請することとしたい。 2020年度は、試行テストとリストおよびテストの修正・改善を継続するとともに、現段階でのリストをもとに、業者に委託し本研究の課題の最終目標であるウェブ版の語彙サイズテストアプリケーションの開発を進める計画である。
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