2018 Fiscal Year Research-status Report
第二言語における節連接の習得とその明示的指導による外国語教育への応用
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18K12439
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Research Institution | Keiwa College |
Principal Investigator |
主濱 祐二 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (20547715)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 従属節 / 生成文法 / 第二言語習得 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は、条件節や理由節を含む様々な節連接のうち、特に時間関係を表す英語のwhen節に着目した。これは、when節が(少なくとも日本の公的英語教育では)比較的学習の初期に導入される従属節の構造で、英語の「節の主従化」傾向と日本語の「節の並列」傾向の相違を追求する試金石となる見込みがあるからである。データ収集については、まず大学生を対象に和文英訳によるサンプリングを行い、オンラインの学習者コーパスのデータとも比較してその特徴を分析した。主節に比べwhen節を正しく産出できる割合はかなり低く(サンプリングでは14.6%)、その原因はwhen節中の定形動詞の形態エラーに集中している。 このエラー傾向は母語と学習中の言語の従属節の統語構造の相違に起因すると仮定した。さらに、英語が時制の一致が義務的であるのに対し、日本語では同様の一致が見られないという類型論的な相違にも着目し、生成文法に基づく第二言語習得(Generative SLA)の枠組みで分析を進めた。分析の際に必要となる、when節の構造構築に必須の形式素性を、whenが生ずる他の構文(疑問文、自由関係節)の性質をもとに特定し、先行研究を踏まえ、構造上when節は空のD/P主要部とwh句のCPが併合されたDP/PPであることを提案した。 研究課題に直接関係する事項ではないが、初年度の取り組みに興味を持ち協力してくれた学生が別の構文(受動文)を取り上げ同様の理論的枠組みで調査・研究を実施し、海外で成果を発表する機会を得た。統語特性以外にも、言語間の機能的特徴(例えば視点制約)の違いも文法項目の習得や実際の産出に影響する可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異動により当初予定していた留学生を対象とする多言語調査ができなかったものの、対象を日本人英語学習者に絞り日英比較統語論の観点から第二言語習得を調査することにした。海外開催の学会・研究会での成果発表が2件あり、特にドイツ・ブラウンシュバイクで開催された研究会では生成文法に基づくSLA研究の最前線で活躍する研究者やヨーロッパ諸言語の専門家から貴重なフィードバックを得ることができた。発表論文は1件のみで、口頭発表の内容を発展させたものを年度末に論文の形で公表することができた。次年度はさらに成果公表の機会を増やし、研究成果の具体的な応用につなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に整理したwhen節の統語特性や形式素性をもとに、対応する日本語の時間節の特性と比較し、生成文法に基づく第二言語習得の観点から英語のwhen節の習得を理論的に説明する。理論研究から得られた知見を英文法の講義に活かし、節連接を含む文法事項の明示的な指導を実施する。明示的指導の効果検証を踏まえ、研究内容を応用した成果物として中級程度の英語力のある大学生向けの英文法テキストを執筆する。
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Research Products
(3 results)