2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12440
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
周 振 東北大学, 国際文化研究科, GSICSフェロー (00792938)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 統語解析 / 名詞句 / 場所性 / 曖昧性 / 存現表現 / 主題 / 主語 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に中国語データの拡充・改善および中国語の構文に関する再考察に力を入れました。 今までの解析方針をさらに進化させ、アノテーションの一貫性を最大限に保つことも配慮に入れながら、解析済のデータに対する修正を続けてきた。また、論文投稿の際に査読者からのご意見とコメントをきっかけに、これまでアノテーションの対象としなかった語彙レベルの情報の解析を試みた。さらに、研究の拡張性を考え、今後行う予定の日中対照研究の準備の一環として、宮沢賢治の童話の中国語訳本のデータを対象とするアノテーションも始めた。研究成果の一部は二本の論文・研究ノートにまとめられ、それぞれ『国立国語研究所論集』と『国際文化研究』において掲載された。 一方、外国語教育の視点から中国語の各構文に関する再考察も続けてきた。前年度から力を入れてきた中国語の存在表現に関する研究を継続し、場所性に関する考察を従来の語彙レベルの枠組みを超えて行った。また、構造上と機能上の曖昧性もあり、習得が困難だとされる中国語の“是…的。”構文に関する考察も行った。そもそも構造的な曖昧性を明示することが本研究で開発しているデータベースのポイントの一つなので、“是…的。”構文に関する考察はその代表として本研究の肝心なところを示せたと考えられる。現段階で研究成果として挙げられるのは二点ある。昨年度言語科学会の学会誌に投稿した中国語の存在表現に関する論文は、今再査読が行われているところである。それに、“是…的。”構文に関する研究成果の一部は、言語科学会第21回年次国際大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、これまで中国語の句、節、構文の解析についての研究成果を多く蓄積してきた。それだけではなく、今まで無視してきた語彙レベルの情報も視野に入れつつある。とはいえ、語彙レベルの情報の取り扱いは決して簡単なことではなく、クリアしなければならない課題も多く残っている。それは今後どこまで進められるかは、今の段階ではまだ言い切れないが、少なくとも本研究で開発しているデータベースの拡張性と可能性を示してくれたと考えられる。また、研究の進むにつれて、アノテーションの対象も幅広くなり、これによってデータベースの均衡性の向上も期待される。 外国語教育の視点からの中国語の各構文に関する考察はその数が増えるにつれて、自分なりの体系をなしつつある。もちろん、今後様々な面でその妥当性を検証しなければならないが、伝統的な中国語学と異なる手法を使って今まで解決できていない課題に取り組もうとする試み自体は有意義だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの通りにデータベースの構築を進めていくと同時に、コーパスを使った研究も実際に展開していきたい。その試しとして、国立国語研究所のNPCMJ (NINJAL Parsed Corpus of Modern Japanese) の日本語データを使って、日中両言語のテンスとアスペクトに関する対照研究を行うことを考えている。また、外国語教育という視点からの中国語の各表現に関する再考察も継続し、その成果を論文化していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2020年2月下旬以降の出張計画がキャンセルされたため、差額が生じてしまった。感染が収束したら、出張を再開する予定なので、今年度の未使用額は来年度の助成金と合わせて使っていきたい。
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