2021 Fiscal Year Research-status Report
カタルーニャ独立問題に伴う言語多様性継承政策のパラダイムシフトに関する研究
Project/Area Number |
18K12453
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
寺尾 智史 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30457030)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | カタルーニャ語 / 地域主義 / 手話言語への国家による管理 / エスノリングスティック / ミランダ語 / アラゴン語 / アンゴラの言語状況と言語政策 / 赤道ギニアの言語状況と言語政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、コロナ禍の影響で予定していた海外フィールドワークを実施できず、これまでの研究成果をまとめることに注力した。こうした成果物の中で、カタルーニャ語を求心力とした、エスノリングスティックな地域主義が、ヨーロッパおよびその他の地域で、地域ナショナリズムの参照枠として利用されており、それが大小の地域紛争の火種となっている現況について述べた。こうした背景は、当該年度末に勃発したウクライナへのロシア・プーチン政権の侵攻にも色濃く影響している。さらに、音声言語に限らず、手話言語においても国家からの管理と、地域主義との相克に揺れ動いているコミュニティがあることを考究した。こうした中で、特筆すべきは、イベリア半島の状況である。まず、ポルトガルでは、手話がろう者のコミュニケーションとして憲法で認められているという、法理上は先進的な状況にあるにもかかわらず、サラザール独裁期に手話が禁圧されていたことから、断片化した「ポルトガル手話」コミュニティの統合が問題となること、他方、「スペイン手話」は、ろう者も地域ナショナリズムに基づく「スペイン人であることへの拒絶感」から、カタルーニャやバスクにおける「カタルーニャ手話」や「バスク手話」の分立かつ確立といった現象群を含む。これらの動向を経年的に考察している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響で、カタルーニャ、アンゴラ(特に飛び地であるアンゴラ、南部のコイサン語族の諸言語話者が残る地域)、ギニア湾内・湾岸諸国であるサントメ・プリンシペ(特にサントメ島南東部のマルーン・クレオールであるアンゴラール語話者へのインタビュー)および赤道ギニア(特にアノボン島でのフィールドワーク)、パラグアイ(特に北部ボリビア国境沿いのアイオレオ語話者へのインタビュー、首都アスンシオンに移住させられているマカ語話者へのインタビュー)等、予定していた海外でのフィールドワークができなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度実施できなかった、海外(それぞれに継続的な研究対象のあるアジア、アフリカ、ヨーロッパ、中南米のいずれか、もしくはこれらのうちの複数)でのフィールドワークを行う。優先順位としては、赤道ギニア(南部アフリカ)、アンゴラ(南部アフリカ)、カタルーニャおよびアラゴン語使用地域を含むスペイン(ヨーロッパ)、中国浙江省(温州市、青田市、金華市)、南米パラグアイのアイオレオ語およびマカ語話者居住地域である。
|
Causes of Carryover |
2021年度に海外フィールドワークを実施予定であったが、コロナ禍による海外渡航制限の影響で実施できなかったため、2022年度に実施することとしたため。
|
Research Products
(5 results)