2022 Fiscal Year Research-status Report
サイト・トランスレーションに関する理論的・実証的研究
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18K12455
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
長沼 美香子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80460012)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サイト・トランスレーション / 字幕翻訳 / テキストマイニング / 語順処理 / 順送り訳 / 通訳 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)に関する文献研究に基づき、英語・日本語間の訳出方略における「順送り訳」という語順処理にテーマを絞ることとした。具体的な分析としては英日間の字幕翻訳に焦点を当て、これまでの研究成果をまとめた。英語ニュース番組の英語スクリプト・日本語素訳・日本語字幕からデータを収集しテキストマイニング用に整えた後に計量テキスト分析を行った。この分析から得られた結果を考察した論文を完成させて、書籍の一部として出版した。当該の書籍は、英日翻訳通訳全般における語順処理を理論と実践の両面から包括的に取り上げた初めての出版物であり、その中で字幕翻訳を素材として扱うことができた意義は大きいと考える。 他方でコロナ禍の影響も依然として小さくなく、実験によるデータ収集には慎重にならざるを得なかった。当初予定していたような対面実験によるデータ収集ではなく、字幕翻訳データを採用することで実証研究を前に進めた。 Zoomなどオンライン会議ツールを活用した学外向けのワークショップや学内の学生を対象とした対面の講演会も実施した。翻訳実務者を講師として招聘して、メディア報道と発信型字幕翻訳についてお話しいただいた。講演後には、小グループでの活発な質疑応答の機会を設けることができた。 国内外の研究者との意見交換の場を積極的に活用した。とりわけパリ・シテ大学で開催された国際学会である「第4回東アジア翻訳研究会議(EATS4)」にて学会発表を行った機会は貴重であった。コロナ禍の状況がやや落ち着いた期間に、思い切って国際学会に出席して発表したことで大きな成果が得られた。加えて、オンラインで開催された学会や研究会にも多数参加した。関連分野の研究者や実務者と交流して情報交換することで、本研究の視野を広げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響が依然として残っていたので、現実的に実現可能な方法へと転換することで、柔軟な姿勢で状況に対応しながら研究を進めることとした。当初の計画通りの実験による実証的データ収集は難しいと判断して、サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)に関する文献調査とデータ分析の手法を探求した。当初の計画からはやや遅れたものの、英日間におけるサイトラの語順処理という観点から「順送り訳」に着目して、字幕翻訳データの分析と考察を論文としてまとめ、書籍の一部として出版することができた。 これまでの研究成果の教育面への応用も視野に入れて検証しながら、本研究の仕上げに向けた活動に努める意向である。
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Strategy for Future Research Activity |
サイト・トランスレーション(以下、サイトラとする)という通訳にも翻訳にも共通する研究テーマに鑑みて、最終的なゴールとしては、通訳と翻訳の両方にかかわる理論・実践・教育に寄与することを目指した研究を推進する。 今後はコロナ禍の大きな影響は少ないと思われるため、さまざまな対面での研究活動を再開して、本研究を仕上げる予定である。サイトラについての文献研究から得られた語順処理の問題を、通訳と翻訳教育の教材へと応用する方策も探る。字幕翻訳の語順処理を「順送り訳」や「結束性」に着目して考察することで、その教育面への応用が可能であると考えている。 常に最新の動向を踏まえた研究とするためには、国内外の学会や研究会にも積極的に参加することが不可欠である。関連分野の研究者と交流を深めるために、オンラインでのイベントばかりでなく、対面参加も実行する。サイトラから出発した本研究の教育への応用を探りながら、着実な取り組みを計画的に続けたい。
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Causes of Carryover |
引き続き新型コロナウイルス感染症の動向へと慎重に気を配った結果である。当初に予定していた実験、セミナー、研究会、学会、講演会などが中止や延期となったり、オンラインのみの開催となったために、次年度分に計上する金額が生じた。 次年度は文献調査を継続しながら、オンラインばかりでなく対面での学会や研究会合への参加、ならびに研究成果公表に必要な諸費用に使用する計画である。
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Research Products
(3 results)