2021 Fiscal Year Research-status Report
英文読解における心的表象構築と変化:情報想起が記憶の強化と忘却に及ぼす影響
Project/Area Number |
18K12463
|
Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
中川 知佳子 東京経済大学, 全学共通教育センター, 准教授 (70580869)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 学習効果 / 遠隔 / オンライン / 質問紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある情報を想起することが、その情報の記憶を強化し長期的に保持することに役立つ「testing effect」がある一方、想起することを求められなかった情報の忘却を促進する「retrieval-induced forgetting」が生じる (Anderson et al., 1994) と言われてきた。しかし、Chan, McDermott, and Roediger (2006) はある情報を想起することによって、想起されなかった記憶も強化される「retrieval-induced facilitation」が生じる可能性を指摘している。 本研究課題では、英文を読んだ後に与えるオフライン課題と、読解中に与えられるオンライン課題によって、どのような情報が強化され、どのような情報が忘却されるのかを検証する。これまでにオフライン課題におけるデータを分析しているが、オンライン課題については個別データ収集(対面)の実施が困難な状況が続いている。そこで、データ収集のために遠隔における実施が、対面における実施とどのような違いがあるのかについて、協力者(つまり、英語学習者)の観点から検証することを2021年度の課題に設定した。 大学生に対し、対面授業と遠隔授業のメリットおよびデメリットについて自由記述形式で回答をもとめたところ、「通学時間や教室間の移動がないこと」「空間的な距離があることで、心理的に近い関係にない学習者同士が適度な距離感をもったまま円滑にコミュニケーションをとることができること」および「ペアワーク」がメリットに挙がっている。デメリットとしては、「周囲の影響を受けてモチベーションを向上させることが困難」「相手の表情を見たいという要望」「発言のタイミングが難しいと感じる」といった面が見られた。学習した内容の記憶という面では、どちらの手法がより良いという結論には至らなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍における制約のため、対面での個別データ実施が困難である。
|
Strategy for Future Research Activity |
学内外での個別の接触、対面実施や静謐な環境の整備についての行動制約が緩んできたことから、オンラインでのデータを収集していく。大規模な調査実施が困難であることに変わりないが、実験協力者や実施状況を可能な限り均質になるようにし、数を絞ったうえで実施する計画である。 すでに、筆記再生課題を実施し、因果ネットワーク多vs.因果ネットワーク少によって再生される情報にどのような違いが生じるかを検証している。この結果おいて強化・忘却されることが明らかとなった情報について、オンライン課題を化した場合に違いが生じるかを検証する。
|
Causes of Carryover |
国際学会への参加および発表を計画していたが、コロナ禍において国内外の移動が制約されたことから旅費として使用することを予定していた額が未使用となった。学会参加費およびデータ収集方法の変更(音声データ収集)に伴うデータのテキスト化外部委託費用に充てる見込みである。
|