2019 Fiscal Year Research-status Report
医療英語教育現場における、共通語としての英語による診療面接の分析
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18K12469
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野澤 佑佳子 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 講師(任期付) (30737771)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共通語としての英語 / 異文化コミュニケーション / 医療英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、言語文化の異なる話者同士の診療面接において、医師が共通語としての英語の意思疎通の中で患者に共感を伝えるための会話ストラテジーについて明らかにすることである。医師―患者間の診療面接の会話データについては医学部英語教育現場において医学部生と模擬患者の診療面接の録音データを提供いただき、分析を進めている。 本年は引き続き文献研究と診療面接の会話データの分析とインタビューデータの分析を行い、研究成果について1件の論文発表(書籍の分担執筆)及び1件の国際学会発表(国際語用論学会)を行った。本研究では、Hojat (2007, 2012)の定義に基づき、診療面接における共感(Empathy)とは医師側の認知的理解であり、必ずしも医師側も患者側と同様に感情的な状態にあることを共有するものではないため、SympathyやCompassionとは区別される。今年度文献研究及び14例の会話データの分析を進めたところ、以下の3点が判明した。1.本研究のデータにおいては、医学生の共感は診療面接が進むにつれてより明示的に表現されていく傾向があること2.特に病歴聴取の段階でUtterance Completions (e.g., Sacks, 1992, Cogo and Dewey, 2012)を用いて共感を表現していること 3.患者側の病状の身体的な辛さだけでなく社会的な背景に共感を示すことで患者の満足度が高くなること 特に1については、少数ではあるが英語母語話者のみを対象とした先行研究においても同様の傾向がみられるという報告があった。しかしながらなぜ後半に共感の表現が明示的になるのかということは明らかにされていないため、今年度はさらに詳細に分析を進め、どのような段階を経て共感の表現が変化するのかということについて調査したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
会話データ及びインタビューデータについては3月から4月中に分析を終える予定であったが、インタビューデータの分析が少し遅れている。会話データによる結果を受けて当初の方向性を変更する必要が生じたため、現在もインタビューデータの分析を進めている。 また、会話データ等は倫理委員化の規定により研究室で厳重に管理されているが、コロナウイルスの影響でやむなく安全性等を考慮し研究室へのアクセスが制限された時期があったため、今年度の分析のまとめについても少し遅れが生じている。喫緊の予定としては7月に遠隔での国際学会発表を予定しているため、引き続き迅速に分析とそのまとめを進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は特に会話データの詳細な分析とインタビューデータの分析及びまとめを終了させ、予定されている国際学会と論文において成果発表を行いたい。特に会話データの結果を裏付けると考えられるインタビューデータの分析が喫緊の課題である。 会話データについてはなぜ診療面接の後半により共感の表現が明示的になるのか、またその過程をより詳細な分析によって明らかにし、インタビューデータにおいては海外診療実習経験者の談話が会話データの分析結果を裏付けるものかどうか引き続き分析を進めたい。
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Causes of Carryover |
国際学会における発表件数が担当授業の日程等により当初の予定より大幅に少なくなったこと、また追加データ収集の必要がなくなったため。今年度は論文発表と遠隔での国際学会発表のため当初よりも多く費用が見込まれることと、参考文献である書籍の購入が不十分であるため、特にこれらの支出に充てたい。
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