2018 Fiscal Year Research-status Report
日本人フランス語学習者の社会言語学的能力の発達過程に関する通時的研究
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18K12473
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
近藤 野里 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 講師 (70759810)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 規範 / 学習者コーパス / 社会言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度はフランス語学習者14名の会話の録音を実施し、録音の文字化を重点的に進めている。録音参加者のうち10名はフランス語圏への留学前であったことから、帰国後に再度録音を行うことで、社会言語学的変異の習得の長期的な調査が可能になる。また日本で学習を続ける学習者4名の録音も同時に行ったため、これによって留学という要因が社会言語学的変異の習得にどのように影響するのかについても調査が今後可能になる。 日本およびフランスで出版されたフランス語の教科書コーパスの構築を行った。データ処理・分析は今後行う予定である。同時に、北米のフランス語圏であるカナダのケベック州で出版されたフランス語教科書のデータ化を行った。この教科書にはケベック州特有の地理的変異および他のフランス語圏でも観察される社会言語学的変異の反映が顕著に観察され、また話し言葉で頻度が高い形の習得を優先させるという特徴がある。このコーパスの分析を行うことで、教科書への社会言語学的特徴の反映方法の可能性を探ることができた。語彙的変異および統語的変異については10月に日本ケベック学会第10回大会で、音声的変異については12月に外国語教育学会第22回大会で報告を行った。 19世紀末に出版されたフランス語の音声教本を基に、20世紀以降の三人称代名詞ilおよびilsの/l/の発音の規範化について分析を行った。この分析の成果は、7月にベルギーで行われたフランス語学世界大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に研究計画調書に記載した「通時的な観察を可能とするフランス語学習者の話し言葉コーパスの構築」および「日本およびフランスで出版されたフランス語教科書コーパスの構築」については、順調に進展しており、分析もすでに始めている。また、教科書コーパスの一部でもある、ケベック州で出版された教科書コーパスの分析を進めたことで、教科書における社会言語学的特徴の反映方法について分析を行い、研究成果の公表のために論文を執筆した。ただし、「母語話者の教授言語コーパスの構築」を開始できなかったため、これは今後着手する予定である。以上から、本研究は当初の計画通り「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、前年度に録音を行った学習者を対象に同様の録音を実施し、またさらなるコーパスの拡充を行い、文字化を進める。母語話者の教授言語コーパスの構築に着手する。学習者の話し言葉コーパスを用いて、発話に表れる社会言語学的能力の発達過程についての分析に着手する。特に否定辞neの脱落および三人称代名詞における/l/の脱落について調査を進める。 学習者の発話におけるリエゾンの実現と教科書コーパスでのリエゾンの実現を比較することで、学習者のリエゾンの習得が教科書的な規範にどの程度影響されるのかについて、8月に開催される国際研究大会New Sounds(早稲田大学)で報告する予定である。フランス語の教科書に反映される社会言語学的変異について、7月に開催されるAssociation of French Language Studiesの国際研究大会(ブリストル大学)で発表を行う。これらの報告後、論文執筆を行う。
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Research Products
(4 results)