2021 Fiscal Year Annual Research Report
Transmission and exploitation of "Japanese-ness"
Project/Area Number |
18K12486
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鵜飼 敦子 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員 (30584924)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日仏文化交渉史 / 高島北海 / エミール・ガレ / ジャポニスム / グローバル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度となるため、高島北海のフランスと日本における活動を中心に、これまでの資料および論文をまとめる作業をおこない、単著として出版する準備をおこなった。現段階では第一校正まで終了している。さらに、展覧会図録への寄稿論文として、高島北海と関係の深かった、19世紀フランスの芸術家、エミール・ガレの作品制作における「偶然性」について考察を加えた。1884年と1889年に書かれた自作品解説書の比較から、この時期にガレが銅の焼成により炎を思わせるような不均一な表現にみられるような制作過程の偶然性を意識していたと分析。反規格性こそがガレのガラス芸術を特徴づける要因であったことを明らかにした。 また、本年度の大きな成果としては、国際的なジャーナルの創刊である。日・中・韓・豪から研究者と美術・博物館関係者が集まり、万国博覧会に関する研究会の立ち上げに関わり、現在、ドイツとトルコからの研究者も加わって、定期的な研究会をおこなっている。共同執筆者のひとりとして思文閣出版より「万国博覧会と人間の歴史」、「万博学―万国博覧会という、世界を把握する方法」を出版した。その一環として、2022年度に『万博学ジャーナル』(仮称)の創刊を決定し、特集として「植民地なき世界の万博」を組む。このため、2021年度をとおして編集委員として会議に参加した。本研究の到達目標としてあげていた、「これまでの美術史の認識について考え、その問題点を見直し、新しい美術史の解釈と叙述を作り出す」という点について、この「万博学」研究は理論面で大きく寄与できているものと思われる。「宗教や民族、人間集団といった、これまでの歴史叙述の前提となっていた既存の枠組みを問い直すこと」を念頭に、主要メンバーとして研究会の企画、運営に従事し、また出版物として成果を形に残すことができた。
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