2018 Fiscal Year Research-status Report
満洲国軍出身日本人による満洲経験と自己をめぐる記憶・認識
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18K12487
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
飯倉 江里衣 東京外国語大学, その他部局等, 非常勤講師 (40814695)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 満洲国軍出身日本人 / 満洲経験 / 記憶・認識 / 民族・階級 / ジェンダー/セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
【具体的内容】本年度は主に二つの成果があった。第一に、「歴史学における記憶研究」というテーマを扱ううえでの方法論を検討する基礎研究ができたことである。この成果は、日本植民地研究会編『日本植民地研究の論点』(岩波書店、2018年)に「第22章 記憶」として掲載された。第二に、その方法論の実践として、満洲国軍出身日本人団体「蘭星会」が戦後に発行した会報を収集し、その会報を分析することで、拙稿「満洲国軍出身日本人の軍人恩給請願運動と満洲の記憶(仮)」(佐藤量・湯川真樹江・菅野智博編『戦後日本の満洲記憶(仮)』東方書店、2019年11月刊行予定に収録)を執筆することができた。
【意義・重要性】これまで歴史学において「記憶」をテーマとする場合、ある特定の時期や出来事の「史実」のみに主な関心が向けられ、「いかに認識され記憶されてきたのか」という視点はほとんどなかった。本研究では、旧植民地のなかでも「満洲」の記憶を抱えた満洲国軍出身日本人が、戦後に「満洲」をどのように認識・記憶してきたかという視点から、彼らの戦後の語りを分析した。 なかでも、これまで歴史資料として重要視されてこなかった、 満洲国軍出身日本人団体「蘭星会」による会報や回想録集、口述資料(インタビュー)を、彼らが戦後から現在において、満洲国軍での経験をどう記憶・認識し、満洲国軍の日本人軍人であった自己をどう回想し位置づけてきたかという観点から分析し直す。このような作業は、日本人の植民地の記憶・認識からなぜ日本の戦争責任や植民地支配責任の問題が抜け落ちてしまったのかを反省的にとらえ直す手掛かりになると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記二つの成果を得ることができたからである。特に、二つ目の拙稿「満洲国軍出身日本人の軍人恩給請願運動と満洲の記憶(仮)」を執筆し終え、来年度の刊行が決まった点は大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、主に「満洲国軍出身日本人にとっての『五族協和』と日本人」という課題に取り組む。本課題では、満洲国軍出身日本人による他民族についての記憶・認識を戦後の「五族之墓」建墓を事例に分析する。
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Causes of Carryover |
今年度3月に中国で学会発表を予定していたが、主催者側の都合で外国人研究者の参加が急遽認められなくなり、学会に参加することができなかった。 今年度発表できなかった内容については、次年度に他の海外の学会で発表を行う計画である。
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