2021 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Research on the Theories of "Civil Rights" in the New Meiji Government
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18K12498
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
湯川 文彦 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (00770299)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 明治維新 / 民権 / 議会 / 教育政策 / 教育法制 / 地方統治体制 / 日本近代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治新政府は、「民権」の保護と活用を強く意識し、内的議論を展開していた。政府官員たちは、人民の抱える諸問題を解消し、公平な社会、ゆたかな生活を保障する「新政」を謳ったが、それを実現するためには広く人民の協力と自発的な活動を引き出すことが不可欠であった。この「新政」の困難ゆえに、政府官員たちは議会制導入に期待し、会議の閉鎖や開催目的の移行を伴いながらも、つねに新たな議会への期待を拠り所に議会制導入を試み続けた。 彼らが明治維新をすすめようとすればするほど、人民社会に存在する多種多様な慣習や従来の価値観が明治維新とより密接な関係をもち、必然的に「地方」の役割が大きなものとなった。千葉県・長崎県の地方議会では、県内各地の旧慣が取捨されたり、旧慣に即した改革法が検討されたりした。東京では首府としての革新と江戸以来の伝統の両面が意識された結果、独特の都市行政を生じることとなった。 一方で、人民の「民権」行使は、人民自身の意識改革や能力養成と密接な関係をもって捉えられていた。文部省や元老院は、教育法制をめぐって人民の「自由」を支えるための一時的「干渉」の必要性を認めた。ただ、明治18年時点でなお人民の自主性や教育に対する認知度の向上が課題とされたように、それは中長期的な課題となった。こうした政府の法制整備や議会開設・運営に並行して「メディア」の役割も注目される。新聞社(日報社)は旧慣を出発点として明治維新を説き、人民が明治維新を自覚的に議論し、自ら参画する状況をつくりだそうとしていた。 このように、明治維新の困難に挑んだ政府官員たちは、人民の「民権」を改革法制に組み込み、議会による議論・調整を期待しつつ、「民権」の自主的行使による明治維新を展望した。それは本然的な「民権」擁護というよりも、明治維新の現実的展開という課題と結びつけられた「民権」論であったといえる。
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Research Products
(2 results)