2018 Fiscal Year Research-status Report
A study in the Mughal Persian translations of the Laghu-Yogavasishtha
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18K12519
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小倉 智史 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (40768438)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヨーガヴァーシシュタ / ムガル帝国 / 翻訳活動 / サンスクリット / ペルシア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ムガル帝国時代、とくにアクバルからシャー・ジャハーン時代にかけてのサンスクリット古典のペルシア語への翻訳活動を扱うものである。分析対象とするのは、サンスクリット思想文献『ヨーガヴァーシシュタ』の、この時代に翻訳された4種類のペルシア語訳である。 初年度となるH30年度は、2度のインド調査を実施し、スリナガル、コルカタ、アリーガル、アアザムガルの図書館で写本調査を実施した。また、2018年8月末から9月初頭にかけて、ダブリンのチェスター・ビーティー図書館を訪れた。インドでの調査では、本研究課題で分析対象に含めていた、アクバル宮廷の詩人・翻訳者ファイズィーに帰される第4のペルシア語訳の写本の、ダブリンでの調査では、ファルムリーによるペルシア語訳の写本の画像データを入手し、原典との比較分析を行うための環境を整備した。 また、最新の研究動向をフォローするため、本研究課題に関連する二次的な研究文献も整備した。 サンスクリット原典とペルシア語訳の比較分析については、後に第4代皇帝となる皇子サリームの命で1597-98年に作成された、ニザームッディーン・パーニーパティーによるペルシア語訳を分析対象とし、サンスクリット原典との比較を行った。その結果、パーニーパティーはサンスクリット文化における神格の名前(ヴィシュヌ、シヴァなど)を、イブン・アラビーの存在一性論における、一者が自己顕現をする際に介在する神名と解釈していることが明らかになった。この点については、日本語・英語で発表した論文の中で言及している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インド、アイルランドでの写本調査は予定通り実施できたものの、パーニーパティー訳のサンスクリット原典との比較分析、およびファルムリー訳の校訂テキストの作成作業は、今年度予定していた分量を達成できなかった。これは、本研究課題の代表者が分担者として参加している他の研究課題との兼ね合いや、国際会議を複数回開催して、その運営に従事したためで、十分な時間を確保できなかったことによる。とはいえ、実施できた分析の結果の一部は公表することができたため、やや遅れているという評価が妥当と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は今年度より多くの時間を本研究課題に割ける見通しであり、研究計画に大きな変更はない。ファルムリー訳の校訂テキストの作成と、パーニーパティー訳、ダーラー・シュコー訳とサンスクリット原典との比較分析を進めていく。また、R元年度にはパキスタンの図書館での写本調査も実施する。
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Causes of Carryover |
ダブリン調査に予定していた額よりも旅費がかからなかったため、当該助成金が生じた。この助成金については、次年度のパキスタン調査の費用に充てる。
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