2019 Fiscal Year Research-status Report
A study in the Mughal Persian translations of the Laghu-Yogavasishtha
Project/Area Number |
18K12519
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小倉 智史 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (40768438)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ヨーガヴァーシシュタ / ムガル帝国 / 翻訳活動 / サンスクリット / ペルシア語 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ムガル帝国時代、とくにアクバルからシャー・ジャハーン時代にかけてのサンスクリット古典のペルシア語への翻訳活動を扱うものである。分析対象とするのは、サンスクリット思想文献『ヨーガヴァーシシュタ』の、この時代に翻訳された4種類のペルシア語訳である。 2年目となるR元年度は、パキスタンのイスラマバード、ラホールの図書館で写本調査を実施した。パキスタンでの資料調査では、出発前に閲覧を予定していた写本を実見ないし複写を入手することができた。しかし今回の調査で、更にカラチのパキスタン国立図書館でも写本調査を実施する必要があることが明らかになった。 また、1602年にアクバルの命で編纂されたファルムリー訳のテキストを、初年度に入手したダブリンのチェスター・ビーティー図書館所蔵写本を底本として入力し、昨年度・今年度の目標にした分量の入力を達成した。また、最新の研究動向をフォローするため、本研究課題に関連する二次的な研究文献も整備した。 原典テキストと翻訳テキストの比較作業では、昨年度から作業を進めているパーニーパティー訳が起点テキストの諸概念を分析的に解釈しており、ファルムリー訳はパーニーパティー訳と似たような傾向を持つものの、より目標テキストの自由度が高いこと。さらにダーラー・シュコー訳は起点テキストに含まれているヒカーヤト(挿話)の物語訳としての性格が強く、起点文化の思想の解釈には全二者ほど重視していないことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ファルムリー訳の校訂テキストの作成作業は、2018年度の未達成分も含めて、今年度の目標としていた分量を打ち込むことができた。ただ、ダーラー・シュコー訳と原典との比較作業は遅れ気味であり、全体としてはやや遅れているという判断が妥当であるとした。これは、本研究課題の代表者が分担者として参加している他の研究課題との兼ね合いで、十分な時間を確保できなかったことによる。
|
Strategy for Future Research Activity |
皮肉なことではあるが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のために様々な出張や研究会の開催等を見直すことになり、本研究課題の作業に費やせる時間はR2年度は一昨年度、昨年度と比べても更に確保できることが期待される。これまでの作業の遅れは、今年度中に取り戻せると考える。 本研究課題の申請書には、R2年度に『ヨーガヴァーシシュタ』ペルシア語訳を主題とする国際会議を開催すると明記していた。R1年度中に招聘予定者(アメリカから2名、ドイツから2名)との交渉を進めていたが、東京での国際会議開催はこのままでは困難だと言わざるを得ない。基本的にはオンラインでの会議を開催するという方向で当初の予定を変更し、準備を進めていく。
|