2021 Fiscal Year Research-status Report
18-20世紀におけるボンベイ市の経済発展 -インド史からの再考
Project/Area Number |
18K12521
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 道大 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (30712567)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ボンベイ / ボンベイ港トラスト / 鉄道 / 貿易統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1課題「ボンベイ市内部の市場形成」に関しては、ボンベイ港トラスト(Bombay Port Trust)の年次報告書の分析を昨年度に引き続いて行った。今年度は、「ボンベイ管区の航行と貿易に関する年次報告書(Annual statement of the trade and navigation of the Presidency of Bombay)」と、ボンベイ港トラスト報告書を1870年代後半から1910年代について比較することにより、貿易量全体の中で、ボンベイ港トラスト管理下の港で貿易が行われ、公権力が把握していた量の割合を品目別に算出した。例えば、アヘンは、ボンベイ港トラスト管理下のボンベイ市内の1港から貿易量の95%が輸出されており、政府の管理下に置かれていたことがわかった。その一方で、綿花の輸出は時代によって公権力との関係が変化していたことが明らかになった。ボンベイ市が発展を遂げる19世紀末における貿易と行政の関係の一端が明らかになった。 第2課題「ボンベイ市の後輩地経済への影響」に関しては、ボンベイ市と内陸都市を結ぶ鉄道に注目し、19世紀末について、「ボンベイ管区における鉄道および河川貿易に関する年次報告書(Report on the Rail-Borne Trade of the Bombay Presidency)」の分析を続け、アヘンなど特定の貿易品に注目しながら、流通の把握を通じてボンベイ市内と後背地の関係を改めて位置づけた。具体的には鉄道貿易の年次報告書は1881年に始まり、1910年代まで収集済みであるから、19世紀末に関して、GISを用いてボンベイ市内の流通データとの重ね合わせを行った。これによって第1課題と第2課題を結び、本研究課題の結論を導く見通しを立てた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大のために、インドおよびイギリスで調査を行うことができなかった。新たな研究手法として大英図書館より遠隔で史資料を注文したが、大英図書館の活動自体が制限されていたため、令和3年度中に注文した史資料が届くことがなく、分析作業が遅れた。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に大英図書館より注文した史資料は、令和4年4月に代表者のもとに届いた。さらに東京大学では、大英図書館の史資料の一部をデジタル化した"East India Company"と題するデジタル・アーカイブの運用が令和4年4月に始まり、史資料状況が改善したため、これらのデータを用いて上記の第1課題と第2課題を結合させ、研究課題の結論を見出す。 新型コロナウイルスの感染拡大の状況を注視しながら、令和4年度は大英図書館での史資料調査を計画し、可能であればデータの不足を補う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大にともないインド・イギリスでの史資料調査が不可能となり、大英図書館自体の活動自体も同様の理由で制限されたため、同図書館から注文した史資料が期限内に届かなかったため次年度使用額が生じた。 そのため本研究課題を延長し、引き続き大英図書館からの注文を継続して行う。それとともに本研究課題の成果を示すべく、2022年7月末にフランスで開催される世界経済史会議(World Economic History Congress)に対面で参加し、その後、本研究課題の不足データを補うべく大英図書館での調査を行う予定である。
|