2018 Fiscal Year Research-status Report
清朝中期漢地政策の変容とその社会経済的背景の再検討(1736-1854)
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18K12522
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
豊岡 康史 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (30712559)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 清朝史 / 経済史 / 政治史 / 嘉慶 |
Outline of Annual Research Achievements |
清朝中期漢地政策は、社会経済状態の変容を前提条件としておこなわれる清朝政府の政治的な対応によって形成される。本年度は、社会経済・政治的対応両者について研究成果の発表ができた。『社会経済史学』83-3には藤原敬士著『商人たちの広州:一七五〇年代の英清貿易』の書評を載せ、清朝経済及びイギリスの海外貿易における広東貿易の位置づけについて論じた。また『銀の流通と中国・東アジア』(大橋厚子共編、山川出版社、2019年)において、18-19世紀の社会経済状態を総括し、貿易黒字拡大に伴う銀利用の拡大に代表される貨幣利用状況と18世紀における人口増大に労働需要が対応できずに縮小傾向へと転じてゆく景況変動、経済規模の拡大にかかわらず、公式財政を拡大できず清朝財政が影響力を失ってゆく過程などの概要を整理した。本研究題目における基盤を形成するのみならず、これまでの清朝社会経済史研究の蓄積を整理し、19世紀の中国近代社会経済史への連結を行う重要な作業を行い得たものと考えられる。 また村上正和・相原佳之・李侑儒・柳静我らとともに、嘉慶四年(1799年)の皇帝名義で発出される上諭について、3月分・5月分を公刊した。これらは、清朝政策決定過程を実際に利用された文書の悉皆調査を通じて具体的に明らかにする作業の一部であるとともに、漢地への配慮と経済への関与縮小など当該期の清朝政策決定の具体的様相を示すもので、個別の政策のみならず人事、財政政策、犯罪捜査など細かい政策群に共通する政策傾向一般を提示することが出来た点に意義をみいだせよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究は、外地調査が行え得なかったものの、本研究題目の基盤となる18世紀・19世紀の中国経済の概況を公刊できたことから、今後の研究の進展につながる作業を行ったものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画において提示した見通しに大きな変更を加える必要はなく、今後も、研究計画に従って、研究を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
海外調査を行なわず、国内での調査・研究会参加を中心としたため、旅費が節約できた。そのため研究計画に沿って書籍・史料等の調達を行ったが、端数について使い切る必要性がなく、次年度の利用に回したため、次年度使用額が発生した。次年度請求額と合わせて年度切り替え時期に発行された書籍などの購入・調達に充てることを計画している。
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Research Products
(4 results)