2019 Fiscal Year Research-status Report
清朝中期漢地政策の変容とその社会経済的背景の再検討(1736-1854)
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18K12522
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
豊岡 康史 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (30712559)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 清朝史 / 経済史 / 政治史 / 嘉慶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、研究計画に基づき、「嘉慶帝親政開始にともなう財政政策の転換過程」および「嘉慶帝親政開始にともなう清朝自己像の転換過程」についての検討を進め、村上正和・相原佳之・李侑儒・柳静我らとともに嘉慶四年六月分・七月分の上諭について訳注を発表した(『地域学論集 : 鳥取大学地域学部紀要』16-1、『環日本海研究年報』25、『資料学研究』17)。そのなかで、すでに本研究課題において仮説として提示されている市場経済への関与を抑制する態度、あるいは漢人社会からの支持調達を念頭に置いた配慮などを指摘することができた。 加えて社会状況についての検討を行い、18-19世紀における人口増が、福建・広東沿海地域において、どのようなジェンダー規範が生まれたのかについて、明清合宿において報告(「「嘉慶海賊」のなかのジェンダー」明清史夏合宿2019、シンポジウム:明清史をジェンダー主流化する/アジア史における血縁構造とジェンダーの比較検討、2019年8月28日)を行った。当該報告において、急速な人口増と空間的流動性の増大は、組織内における規範を簡易化・単純化し、ジェンダー規範をはじめとする組織内の分業固定を抑制する傾向があることを指摘した。清朝による市場や民間の秩序への介入抑制の政策傾向は、このような社会規範の希薄さを追認するものであったと言えるだろう。清朝の政策が、社会経済状態の変容への対応を基軸として策定されているという、本研究の仮説について補強する材料がそろいつつあるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も海外での実地調査を行わなかったが、ウェブ上での資料公開などもあり、必要な史資料の調達はできた。申請段階での仮説を肯定する研究結果も公開でき、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画において提示した見通しに大きな変更を加える必要はなく、今後も、研究計画に従って、研究を進めてゆく。 新型コロナ感染症流行のため、海外調査・学会参加については予定が立たないが、電子資料およびZoomなどのツールを用いた意見交換によって、遅滞なく研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症拡大に伴い、3月に予定されていた国内出張が行われなかった。次年度の出張旅費に充てることを予定している。
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Research Products
(4 results)