2021 Fiscal Year Annual Research Report
Socioeconomic Structure and the Transformation of the Qing Dynasty in the 18th and 19th Centuries
Project/Area Number |
18K12522
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
豊岡 康史 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (30712559)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 清朝史 / 中国経済史 / 中国政治史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画にもとづき、1830年代=アヘン戦争直前の清朝自己像についての検討を行った。1830年代までに清朝は、長江流域経済への配慮、収賄の抑制を名目とした政府機能の縮小、民間からの意見聴取の制度化、対外的な中華帝国的自己像を中心とする朝貢冊封体制の表面的確立など漢人知識人の世界観に親和的な自己像を作り上げた。元来、清朝の漢人へ示される自画像は、対外関係に象徴的なように、表面的に取り繕ったものであったが、1830年代以降、漢人中堅官僚による原理主義的な政策提案を否定できなくなる。1840年のアヘン戦争直前における硬直的な対英政策はその現れであった。清朝は「漢化」することで、漢人の支持を確立しつつ、一方で政策上の柔軟性を失ったのである。 以上の見通しをふまえて、本年度は、嘉慶初年の上諭訳注を1ヶ月分公開し、また清朝の流通税徴収に関わる実務を記録した『東洋文庫所蔵『潯関奏档』『潯関貢摺』影印・解説:清朝嘉慶年間の九江関』を刊行し、江西省における長江流通における課税額の減少と、それへの対応のあり方を明らかにした。 また、2022年5月に開催された社会経済史学会大会においてパネル「海域アジア経済史研究の回顧と展望」を組織し、またそこで清朝経済に影響を与えうる国際収支のありかたについて整理して、清朝政府の対応とのギャップの存在を示した。 なお、これまでの研究成果については嘉慶初年の上諭訳注および、19世紀前半清朝史にかかわる論考をまとめ、書籍としての刊行を22年度、23年度に予定して、出版社と調整を行っている。
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Research Products
(6 results)