2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12524
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
海老根 量介 学習院大学, 文学部, 准教授 (30736020)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 上博楚簡 / 楚 / 説話 / 出土文字史料 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度より引き続き、上博楚簡に含まれる楚を舞台としたいわゆる「楚国故事」を中心に研究を進めた。 まず、前年度末にオンライン開催された国際学会で発表した「視日」に関する研究について、さらに検討を深めた。「視日」は、上博楚簡『昭王毀室』・『君人者何必安哉』・『命』や包山楚簡中などに見られ、それが指すものをめぐってこれまで研究者の間で議論が行われてきた。研究代表者は、「視日」には三種類の意味があり、それらはもともと一つの意味から派生してきたことを述べた。当該年度は、学会発表時にはやや不確かであった内容について、発表時に寄せられた意見を踏まえながら再検討し、より正確な記述になるようにつとめ、論文としてまとめた(2022年5月現在、未刊行)。また、楚の行政文書という性格を持つ包山楚簡中の「視日」や「執事人」といった称謂に注目し、秦漢時代の行政文書と初歩的な比較を行った。 ほかには、上博楚簡『申公臣霊王』をはじめとする、『春秋左氏伝』などの伝世文献と対応する内容を持つ出土文字史料中の諸篇について検討し、両者の関係を考察した。出土文字史料に見える記述・伝世文献の記述のどちらか一方が正しい、もしくはどちらか一方をもう一方の内容を補う材料と考えるのではなく、両者の異同に注目しながら検討を進めることで、伝世文献の成り立ちにも迫ることができるとの考えのもと、『春秋左氏伝』が先行する諸説話を取り入れ、編集していく過程を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は長引く新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、研究上でさまざまな制約を受け、研究計画にも大きな影響が出た。それ以外にも、2021年度より研究代表者の本務校が変わり、新たな環境の中で思うように研究の時間を確保することができなかった。 しかしながら、すでに述べたように2020年度において研究を進めた内容を論文としてまとめるとともに、本研究課題の主要な研究目標として位置づけていた、出土文字史料と伝世文献の関係を探る作業について、来年度にその成果をまとまった形で報告するための整理を一定程度進めることができ、最低限の準備はできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に進めた、上博楚簡『申公臣霊王』と『春秋左氏伝』などの伝世文献とを比較し、両者の間の異同とその意味を検討した研究内容をまとめ、学術雑誌において論文として公表することを目指す。もちろん学術報告の機会があればそれも利用したい。
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Causes of Carryover |
上述の通り、当該年度は新型コロナウイルス感染症の拡大や研究代表者の転任にともない研究計画に多方面で影響が出たため、研究成果の公表がうまくいかず、次年度に繰り越して研究を継続することになった。 現地に渡航しての国際学会への参加は引き続き困難であると思われるので、次年度に繰り越した金額は関連資料の収集・整理のための費用や、研究成果公表のための費用として充当したい。
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