2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12526
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石野 智大 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (00770968)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 唐代 / 領域支配 / 地方行政 / 村落制度 / 基層社会 / 石刻題記 / 仏教石刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である本年度の前半は、研究実施計画に基づき、唐代石刻題記中の事例の収集と整理を進めた。また、後半には関連史料の収集と整理を継続しつつ、それと並行する形で、唐朝の支配地域における基層社会の構造を読み解くための具体的な作業に着手した。 本研究の基礎となる事例収集では、既刊の録文史料集と拓本史料集との対照を踏まえて作業を進めることで、本研究に関わる重要史料を複数見出すことができた。とりわけ、『続修四庫全書』史部・金石類所収の清代石刻書には、これまで未注目の石刻題記の録文も収録されていたことが判明し、今後の研究につながる史料が蓄積された。また、本研究の分析対象史料の一つである河北省本願寺旧蔵の唐「金剛経碑」(実物は所在不明)については、かつて北京大学図書館にて清代拓本の調査を実施していたものの、そこには碑身の拓本しか残されておらず、碑首の拓本の存否は不明であった。しかし、本研究を進めるなかで京都大学人文科学研究所に本碑の碑首の拓本が現存することに気づき、本年にその実見調査を行うことができた。これによって、本碑の検討を本格化させることが可能になった。 本年度の後半では、上記の基礎作業を踏まえて二つの方面から研究を進めた。その一つは、唐代村落制度下の行政担当者と教化担当者の間に役割分担のみならず、明確な年齢差が存在することを指摘したものであり、『明大アジア史論集』第23号(2019年3月)に「唐代の里正・坊正・村正の任用規定とその内実」と題する論文として公表した。もう一つは、唐「金剛経碑」の復原をもとに、玄宗期前半の村落社会における郷望(在地有力者)の実像を探ったものであり、その成果は年度内に論文としてまとめ、現在は国内の学術雑誌に投稿中である。これらの研究活動によって、唐代の基層社会内部の人的構成が徐々に明らかになってきており、次年度へと繋がる基礎的な研究が展開できたと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に関わる事例の収集・整理とそれを踏まえた研究の双方において一定の成果を得た。本年度前半の一時期は家族の体調不良とそれに伴う入退院への対応によって、史料収集作業にもいくらか影響が出たものの、年度後半での作業の進展によりその遅れをおおよそ取り戻すことができた。また、本研究を進めるなかで、探し求めていた拓本の所蔵が海外研究機関には確認できず、むしろ国内の研究機関に収蔵されていたことが判明し、許可を得て速やかに該当拓本の実見調査を行うことができた。それによって、個別史料の整理とそれに基づく研究が予想よりも早く進んだ部分がある。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、これまでに収集・整理した石刻題記を中心に分析を進め、そこから得られる知見を順次まとめつつ、研究報告や論文として公表してゆく。また、本年度の史料収集作業によって清代の石刻書から新たに見出された唐代村落制度史料については、実物ないしは拓本史料の調査を踏まえて、さらに詳細な分析を進めることにしたい。
|