2018 Fiscal Year Research-status Report
近世東アジアの地方史誌と中国の地方志編纂の影響―編纂過程を手掛かりに
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18K12528
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小二田 章 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (10706659)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東アジア / 地方史誌 / 地方志 / 編纂過程 / 史学史 / 社会 / 近世中国 / 影響関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的 本研究は、中国の宋代以降における「地方志」の編纂活動の社会的背景を検討するとともに、近世東アジア地域で同様の書物が共通して発生した原因と背景について考察を行い、「地方志」の他地域への影響関係を検討するものである。本年度は、以下3項目を予定している。①前科研費の計画内でもある英語による学会報告を実行し、英語誌への投稿を試みる。②申請者のこれまでの地方志研究を総括した単著の出版準備に着手する。③東アジアの「一統志」を比較検討するミニシンポジウムを開催する。 研究方法と成果 基本的には、「地方志」と近世東アジアにおける類似の書物(朝鮮の「邑誌」、日本の「藩史」など)の編纂過程・史料的性質を理解し、社会背景及び先行する「地方志」からの影響のあり方を検討する比較研究を行う。そして、最終的には東アジアの「地方史誌」(上記書物を統合した概念用語)が共有する時代的性質と、それが指し示す東アジア史・史学史上の意義について、一定の見解を示す。成果としては、前科研費の成果を引き継ぎ、『乾道臨安志』『淳祐臨安志』に関する前年度の学会報告が、中国の論文集に採録され刊行された。また、清代の地方志については、前年度に報告を行った清初期の名勝志『西湖志』の、文化支配の側面と水利政治の側面のそれぞれについての報告が、雑誌論文として刊行された。加えて、前科研費と重なる成果として、清・乾隆嘉慶期に活躍した史学思想家・地方志編纂者である章学誠とその編纂した地方志における女性記載について、英語による学会報告を行った。 本年度は、配偶者の専任研究職着任もあり、育児・家庭負担が増大した結果、予定の項目内容が多く延期された。①英語誌への投稿、②単著出版準備、③シンポジウム開催がそれぞれ次年度に延期となった。その内、③シンポジウム開催については、その準備として予備報告会を年度内に開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、前科研から引き継いだ、英語による学会報告として、“The Biographies of Women in Local Gazetteers: Focusing on Qing Dynasty Historian, Zhang Xuecheng”,ASCJ2018, ICU:Tokyo,Jun.2018を行った。該報告は初めて地方志を史学思想上に位置づけ、同時代の地方志編纂にも影響を与えた章学誠について、先行研究の整理を行うと共に、同時期の地方志編纂の状況に関する概括を併せて行った。 また、「学会報告の論文化」については、前々年度に行った「再論《乾道臨安志》《淳祐臨安志》」(首屆中日青年学者宋遼夏金元史研討会、於復旦大学{上海}、2016年9月)が、論文集(『首届中日青年学者宋遼西夏金元史研討会論文集』、上海:中西書局、pp.200-217、2018)に採録された。さらに、前年度に行った「康熙雍正期杭州的“地方志”編纂」(清朝政治発展変遷研究国際学術研討会、於復旦大学{上海}、2017年6月)及び「『西湖志』編纂と水利」(2017年度中国水利史研究会大会、於大阪教育大学、2017年11月)が、それぞれ『東洋文化研究』21号(学習院大学東洋文化研究所、pp.1-25、2019年)と『中国水利史研究』46号(中国水利史研究会、pp.19-36、2018年)に採録・刊行された。 今年度は、妻の異動・専任教員着任に伴って育児・家庭負担が増大し、研究の目標遂行に遅れと延期が生じた。まず、「英語による論文投稿・刊行」が次年度に延期となった。「自身の研究まとめと単著刊行準備」は論文の整理・投稿が進まず、次年度に延期せざるを得なくなった。そして、「シンポジウムの開催」は、開催を次年度に延期し、代わりにシンポジウムの準備として予備報告会(於早稲田大学、2019年3月)を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、既に計画済みのものとして、東アジア各地域の研究者と議論を行うシンポジウム「東アジアの一統志」(於早稲田大学、2019年7月28日)を主催し、地域を越えた交流と、地方史誌の相互影響に関する議論を行う。そして、シンポジウムを手がかりに、一般向け啓蒙書を兼ねた論文集として、『アジア遊学』の特集「一統志の時代」(勉誠出版、2020年度刊行予定)を主編し、紙上にてより広く(世界史上の近世・地方史誌について)議論を行い、かつ発信を行う。 また、東アジアのうち、日本の近世地方史誌(『豊後国志』を予定)を中国地方志との比較により検討する論考を作成して投稿し、議論の試金石とする。 上記の議論を含めて、論文の整理・投稿を行い、延期されている単著(近世中国の地方志と編纂過程に関する研究書)の刊行準備に着手する。
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Causes of Carryover |
購入を計画した書籍が、書店の在庫なく取り寄せとなり、年度をまたぐことになった。 該余剰については、書籍購入に充てたい。
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Research Products
(4 results)