2019 Fiscal Year Research-status Report
東北アジアの歴史展開に青海チベット仏教寺院ネットワークが果たした役割に関する研究
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18K12531
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
池尻 陽子 関西大学, 文学部, 准教授 (50795044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フフホト / チベット仏教寺院 / 南モンゴル / 青海 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前年度に行った調査及び収集資料を用いての成果発信を積極的に行うとともに、台北(中央研究院及び国立故宮博物院)での資料調査を実施した。 2019年7月上旬にフランス国立東洋文化学院(パリ)で開催された第15回国際チベット学会において、Trans-regional connections in the formation of the Buddhist status in Hohhotと題する研究報告を行った。南モンゴルの中心都市フフホトの仏教僧院と青海及び北京との人的繋がりを明らかにした上で、清朝のチベット仏教管理体制におけるフフホトの位置付けを論じた。清朝支配下での管理政策や北京の青海出身高僧との師弟関係に基づく繋がりがフフホトの僧院秩序と仏教僧の地位確立に重要な役割を果たしたことを指摘した上で、フフホト仏教界の独自性を過小評価すべきでなく、清朝の管理体制としてもフフホト仏教界の歴史と状況に配慮した措置が講じられていたことを論じた。 2020年2月中旬に台北における資料調査を実施し、中央研究院及び国立故宮博物院における関連資料の残存状況について調査した。コロナウイルスの影響で調査期間を短く限定した上、現地研究者との接触も極力避けざるを得なかったが、今後の研究に資する情報を得ることができたと考えている。 その他、前年度から引き続き取り組んできた研究成果として、清代北京におけるチベット仏教の葬礼を取り上げた「北京におけるパンチェン・ラマ六世の客死と葬送」(『アジア遊学245 アジアの死と鎮魂・追善』勉誠出版、2020年3月)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、現地調査という面では研究対象地域に赴くことができなかったという物足りなさはあるものの、規模の大きな国際学会での成果発表と台湾での資料調査を実施し、その中で今後の研究に繋がる研究交流を持つこともできた。本研究課題に有益な活動実績を積むことができたと考えられ、研究課題は概ね順調に進展していると判断するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現地調査に力を入れたいところであったが、コロナウイルス問題の収束が見えない現状において、この方針は変更を余儀なくされている。差しあたっては、2018・2019年度に入手した史料の精査に力を注ぐとともに、成果発信を引き続き積極的に進めていくこととする。
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Causes of Carryover |
「若手研究における独立基盤形成支援」のうち、大型図書の購入費について、中国での出版遅延などがあり、次年度に繰り越している。大半はすでに納品の目処が立っており、次年度に使用できる見通しである。
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