2021 Fiscal Year Research-status Report
独立直前の西アフリカにおけるリテラシーの社会的位置づけ:ハンパテ・バの活動から
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18K12532
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 世治 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (80800820)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リテラシー / 人類学史 / アフリカ史 / ブルキナファソ / グリオール |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においても、新型コロナウィルスの感染状況から国外での調査研究の実施が困難であったため、国内で可能な研究への転換を図った。そうしたなかで、2つの点についての研究を重点的に進めた。一つ目は、アマドゥ・ハンパテ・バの同時代人であり、ハンパテ・バとの交流もわずかであるが確認されている、フランスの人類学者マルセル・グリオールについての研究である。グリオールのドゴンについての研究は世界的に著名であるが、彼のフィールドノートを用いた研究はいまだ途上であり、国立民族学博物館に所蔵されているグリオールのフィールドノートのマイクロフィッシュを用いて研究を進め、2つの論文を発表した。それらの論文では、グリオールによるオゴテメリの語りについて、グリオールのドゴン研究に対する批判と反批判を整理したうえで、オゴテメリ=グリオールの思想として神話とその釈義にあらわれるアナロジーの思考を明らかにした。具体的には、繊維や水が螺旋や湿り気などといったモノの性質を起点としたアナロジーによって(差異を含みつつ)連続的なものとして認識され、このようなアナロジーの連鎖が、モノと非実在的存在者の概念群のネットワークを構成し、論理的な帰結として、新たな認識を生じさせることを述べた。二つ目は、アマドゥ・ハンパテ・バとやはり同時代人であり、ローカルな知識人として、ごく一部の人びとに知られていたマルハバ・サノゴについての研究である。彼は現在のブルキナファソの第二の都市ボボ・ジュラソで活躍した知識人であり、西アフリカ・イスラーム研究のなかでは重要な「インフォーマント」ととして位置づけられている一方で、彼自身の思想については研究がされてこなかった。そうした状況についてのまとめをおこない、日本アフリカ学会等での口頭発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスによって国外での研究がすすめられなかったという点は、本研究課題の研究の進捗に大きな影響を与えている。しかし、そのような状況のなかでも、国内で入手可能な資料と研究対象に方向性を変化させることで、本研究課題の進捗をおおむね順調に進展させることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方法としては、本研究課題の研究費では実質的に海外への渡航が不可能になっており、リテラシーの社会的位置づけという問題をより一般化させた問題として捉えなおし、科学技術コミュニケーションとリテラシー、文字と図像との関係性といった点で現在の日本の事例との比較研究をおこない、西アフリカ史研究のポテンシャルを開拓していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大によって、海外への渡航が困難となり、国内での研究へと転換せざるをえなかった。そのため、国内での研究の遂行に必要とされる書籍の購入に使用をおこなった。また、来年度は海外渡航のための資金が当該研究課題では不足しているため、国内での現在のリテラシーの社会的位置づけを研究するための国内の旅費と物品費に充てる計画である。
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Research Products
(13 results)