2018 Fiscal Year Research-status Report
宗教改革思想の伝播に関する研究-オーラルなコミュニケーションを中心にして
Project/Area Number |
18K12538
|
Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
永本 哲也 獨協大学, 外国語学部, 非常勤講師 (60623858)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 宗教改革 / 再洗礼派 / ドイツ / メディア / コミュニケーション / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オーラルなコミュニケーションに注目しながら、宗教改革思想の伝播のメカニズムを実証的・体系的に明らかにすることを目的とする。そのために、1534~35年にミュンスターや下ライン地方で再洗礼派によって行われた宣教が、いかなるメディアを通じて行われ、どのような効果を上げたかを明らかにしようと試みる。 1. 本年度は、本格的に実証研究を行う前段階として、先ず研究史の網羅的な把握に努めた。近年宗教改革研究は劇的な変化を遂げているため、宗教改革研究全体の動向を調査し、その結果を『歴史学研究』975号(2018年10月号)掲載の研究動向論文として刊行した。 2. 宗教改革期のメディアやコミュニケーション研究に関する先行研究を整理し、2019年3月22日に獨協大学で開催されたワークショップで報告した。このワークショップは、美術史、文学、歴史学の研究者が集まる学際的なものであり、他分野の研究者との議論を通じて、歴史学以外の視角から16世紀のメディアやコミュニケーションを分析するための示唆を得た。 3. 2018年9月10~20日まで、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州立文書館ラインラント部門で史料調査を行った。この調査では、ユーリヒ公領各地の再洗礼派取り締まりに関する代官の書簡や逮捕・処刑された再洗礼派のリストを閲覧した。特にBorn-Sittard管区の史料群によって、数多くの再洗礼派の名前や出身地が把握できた。またこの調査の結果、おそらくユーリヒ公領の再洗礼派記録の大半は失われており、史料で把握できるよりも遙かに多くの再洗礼派がこの地域にいた可能性が高いことが判明した。 4. 刊行・未刊行史資料を用いて、居住地や移動経路、宣教を受けた場所や者、宣教した場所などの情報を含む下ライン地方の再洗礼派の人名リストの作成を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、ドイツの文書館での史料調査を予定通り行い、先行研究の把握や必要な史資料の調査・入手も概ね終了した。また、既にこれらを用いた下ライン地方再洗礼派人名リストの作成にも着手している。ただし、現在の標準語である高地ドイツ語とはかなり異なるライン地方の16世紀の史料を正確に理解することは容易ではなく、なおかつ読解が必要な史資料の数も多いため、人名リスト作成は予定よりやや遅れている。ただし、読解が進んだ部分については既に分析を進めており、その成果を国内の研究会で報告することも決定している。以上の理由から、全体としては概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、これまで入手した史資料を読解し、下ライン地方再洗礼派の人名リストを完成させることに最優先で取り組む。また、2019年3月のワークショップで行った報告を基に、宗教改革期のコミュニケーションに関する研究動向論文を執筆・投稿する予定である。進行中の調査から得られた分析結果を、宗教改革史研究会で報告し、国内の研究者と議論を行う。
|
Causes of Carryover |
同年度に他の研究助成を用いて設備・備品を購入することができたため、次年度使用額が生じた。他方予定より図書購入が増えているため、文献・資料の入手のために使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)