2020 Fiscal Year Research-status Report
啓蒙専制期ハプスブルク君主国における知的公共圏の政治的機能の研究
Project/Area Number |
18K12539
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
上村 敏郎 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (20624662)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 啓蒙専制 / ハプスブルク君主国 / 出版 / ネットワーク / 公共圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、啓蒙専制期ハプスブルク君主国における公共圏、特に権力と言論活動の関係を検討するために、過激な啓蒙思想の流通と関連する3つのコミュニケーション・ネットワーク、①出版ネットワーク、②秘密結社ネットワーク、③宗派ネットワークの関係性と構造を解明し、ハプスブルク君主国における言論活動が「文芸共和国」と言われるような仮想的な知のネットワーク空間にどのような形で関与していたかに留意しつつ、ハプスブルク君主国における啓蒙期知的公共圏が果たしていた政治的機能について検証することを目的としている。 2020年度は、コロナ禍の影響により現地における史料調査を全くおこなうことができなかった。その代わりにオンライン上でウィーンの書籍商ゲオルク・フィリップ・ヴーヘラーの兄で、ケルンテンのプロテスタント共同体の最長老であったガブリエル・ヴーヘラーに関する史料A 238 a Bue 105(バーデン=ヴュルテンベルク州立文書館)およびヴーヘラーの下でいくつかの出版物を執筆したケルンテンの牧師ザムエル・ザックスに関する史料AT-KLA 184-C-44.036 Ak(ケルンテン州立文書館)をデジタル複写で手に入れた。この史料の分析の結果、ザムエル・ザックスの活動は本研究のテーマである秘密結社ネットワークと宗派ネットワーク双方に関係する重要な事例であり、ケルンテン地方においての民衆啓蒙がヴーヘラーの出版活動と連動しながらおこなわれていたことが判明した。 また、研究成果の公開としては、マリア・テレージアのハンガリー王戴冠式をめぐる言説を分析した論文を執筆公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はコロナ禍への対応によって、研究活動に割ける時間が激減し、思うように研究できなかった。また、実現できなかったが、春休み期間での海外調査実施への期待から、ぎりぎりまで研究費の使用を控えていたことも研究遅延の一因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍が続く現状を考慮すると、今年度も海外調査は難しいと考えられるため、昨年度おこなう予定で、実施できなかった史料調査については今年度も断念し、可能な限りオンラインで史料を調査する。また、それと同時にこれまでに手に入れた史料の分析をすすめ、論文を執筆することに注力していく予定である。 本研究の最終年度となるため、公開に向けて、これまでの研究をまとめることを目標とする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって、海外での調査が実施できず、またオンライン授業のための準備などの教育業務によって十分な研究時間を確保できなかったため
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Research Products
(1 results)