2022 Fiscal Year Research-status Report
啓蒙専制期ハプスブルク君主国における知的公共圏の政治的機能の研究
Project/Area Number |
18K12539
|
Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
上村 敏郎 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (20624662)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ハプスブルク君主国 / 公共圏 / 啓蒙専制 / ネットワーク / 秘密結社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、啓蒙専制期ハプスブルク君主国における公共圏、特に権力と言論活動の関係を検討するために、過激な啓蒙思想の流通と関連する3つのコミュニケーション・ネットワーク、①出版ネットワーク、②秘密結社ネットワーク、③宗派ネットワークの関係性と構造を解明し、ハプスブルク君主国における言論活動が「文芸共和国」と言われるような仮想的な知のネットワーク空間にどのような形で関与していたかに留意しつつ、ハプスブルク君主国における啓蒙期知的公共圏が果たしていた政治的機能について検証することを目的としている。 2022年度は、関連する発展的研究課題が別の科研費に採択されたため、本研究課題については、残額が十分でなかったこともあり、海外での史料調査ではなく、主に研究書の購入を実施した。 昨年度から引き続きウィーンの警察文書と大司教区文書の史料の分析をすすめ、ドイツ・ユニオンの関係者が1794年の靴屋の涜神事件と関係していた可能性を検証した。また、6月に神戸大学でおこなわれた「近世・近代ヨーロッパの比較宮廷史研究会」に参加し、関西の近世史研究者と交流を深めた。 2022年に発生したロシアのウクライナ侵攻を受けて、本研究課題の範囲を若干拡大し、ハプスブルク君主国のガリツィア地方に関する啓蒙知識人の言論活動とその政治的な影響について再検証した。 研究成果の公開として、10月に開催された東欧史研究会・ハプスブルク史研究会合同個別報告会で、「18世紀末ハプスブルク君主国における啓蒙知識人のガリツィア観」というタイトルで研究発表を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年からなコロナ禍の影響で遅れた進捗状況は残念ながら取り戻せていない。ただ、その一方で研究自体は少しずつではあるが前進できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究費の残額が少ないことと最終年度になるので、これまでの研究成果をまとめることに専念したい。本研究を通じて残された課題については、本研究をベースに発展させたもう一つの研究課題に引き継ぎ、検討していく。
|
Causes of Carryover |
2022年度の残額では、物価高もあり、海外に長期滞在することは難しく、予定していた海外での史料調査を実施できなかったため。 2023年度は残額も多くないため、基本的には研究成果をまとめるにあたって必要な論文や図書、アプリケーションの購入にあてる予定である。
|
Remarks |
以下2つの事典の項目を執筆した。 ・『啓蒙思想の百科事典』 (分担執筆:啓蒙専制君主)丸善出版 2023年1月、446-447頁 ・『ハプスブルク事典』 (分担執筆:啓蒙の時代;ヨーゼフ2世;多民族の統一体国家の模索;ジャーナリズム)、丸善出版 2023年1月、448-451、458-459、504-505、536-539頁。
|
Research Products
(1 results)