2018 Fiscal Year Research-status Report
The Low Countries in the Habsburg Diplomacy during the reign of Charles V
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18K12543
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
加来 奈奈 金沢学院大学, 文学部, 講師 (20708341)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ネーデルラント / ハプスブルク / ベルギー / カール5世 / 外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神聖ローマ皇帝カール5世に関する研究の中で十分に議論されてこなかったネーデルラントの外交に焦点を当て、カール5世の時代におけるハプスブルクの外交交渉を、ネーデルラント総督を中心としたネーデルラントの中枢から検討するものである。具体的には、ハプスブルク家の人員や駐在大使らの間で交わされる書簡を分析し、ネーデルラント総督の平和交渉への働きかけや、総督の命により派遣される使節の任務を検討することで、ハプスブルク内の繋がりやそれぞれの戦略を明らかにし、ハプスブルクの外交交渉におけるネーデルラントの意義を考察していきたい。 2018年度は、史料収集や研究交流、史料分析に力をいれた。夏期にはベルギーでの史料調査を行った。これにより本研究の基盤となる多くの史料をブリュッセル王立総文書館で収集することができ、Leuven大学やGent大学の図書館においても多くの資料を収集した。加えて、Leuven大学のSoen教授とも研究交流を行い、多くの有意義な情報を得ることができた。特にリエージュ大学の研究者を中心に、カンブレ平和条約に関する学会が行われたことを聞き、その主催者ともメールを通して連絡を取ることができた。この学会の成果の出版に関する企画があるので、可能であれば参加するように誘われ、研究交流を続け、外国語での論文執筆に取り組んでいる。 国内においては、ここまでの研究成果をまとめ、ブルゴーニュ公国史研究会で外交使節に関する研究報告を行い、今後の研究発展につながる有意義な議論ができた。加えて、ベルギー大使館で開催されたベルギー学会では16世紀のネーデルラントの外交の立役者の一人であるマルグリット・ドートリッシュについて報告し、ここでは幅広い分野の研究者と交流でき、本研究のアピールにもつながった。また、このマルグリットに関する論文を、『金沢学院大学紀要』に執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度ということもあり、まずは重要な史料や研究書を収集することが重要であったが、これについては概ね良好に収集できたといえる。ベルギーとオーストリアのウィーンに主要な外交文書があると考えていたが、今回はベルギーにおいて調査を行い、おおよそ十分に収集できたと考えている。また、今回の海外調査によって、研究交流もでき、目標の一つであった外国語での研究論文の刊行についても、有意義な情報を得ることができ、執筆にも着手した。研究報告については、現段階までの成果をまとめ、より専門的な研究会と、広範な研究者の集まる学会との両方で研究発信し、意見交換することができた。さらに、今後の研究の基盤となる論文も刊行できたので、初年度としては概ね順調だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、予定通りウィーンの文書館で調査を行いたいと思っている。しかし、リエージュ大学の研究者とも研究交流が生まれ、出版の話などもあるので、必要があればリエージュ大学での研究交流とベルギーとフランスのノール県文書館での調査を先に回して、ウィーンでの調査を翌年に変更する可能性もある。また、前回の海外調査で得た史料を中心に史料を読み解き、それを成果として発表・論文化していきたい。加えて、これまでカール5世の治世でも前半期のネーデルラント総督であったマルグリットを中心とした研究に力を注いできたが、カールの治世後半のネーデルラント総督であるマリアと、彼女と密に手紙をやりとりしながらハプスブルクの外交で活躍したカール5世の重臣グランヴェルにも焦点をあて、研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
海外から取り寄せるものもあり、書籍代の予算を余裕をもって見積もっていたため、若干の差が生じ、6千円程度余ってしまった。これについては、2018年度に予算を気にして買うことのできなかった書籍を買うため、2019年度の物品費に合わせて使用したい。
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