2019 Fiscal Year Research-status Report
Greek Cities in Hellenistic Asia Minor and the Imperialism of the Roman Republic
Project/Area Number |
18K12545
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
藤井 崇 関西学院大学, 文学部, 准教授 (50708683)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘレニズム / ポリス / ローマ / 帝国主義 / アフロディシアス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヘレニズム期(特に前2世紀前半から前1世紀末)の小アジア西部におけるギリシア人のポリスを対象として、これらのポリスの市民軍が、共和政ローマの東地中海における覇権の成立にどのような貢献をし、その貢献がその後のポリスのアイデンティティ形成にどのような役割を果たしたのかを、主に銘文史料と文献史料から明らかにすることを目的としている。本研究は、大きくは以下の二つの論点から構成される。第一に、ヘレニズム期のギリシア人ポリスの軍事力の実態とそのローマ帝国主義への貢献の分析。第二に、ヘレニズム期におけるローマへの軍事的貢献の歴史的記憶のあり方の検討、である。 以上の研究課題にたいして、前2世紀初頭から前1世紀後半までのポリスによるローマへの軍事貢献を概観した前年度の成果を基礎として、本年度は、小アジアのカリア地方にあるギリシア都市アフロディシアスに注目し、主に前1世紀のローマ内乱の時代にアフロディシアスがおこなったローマへの軍事貢献を検討した。具体的には、前88年のローマ将軍クイントゥス・オッピウスへの軍事貢献を伝える銘文を詳細に分析しながら、この軍事貢献を通じて得られたアフロディシアスにとってのメリット(ローマとの互恵的なギブ・アンド・テイクの確立ならびに自身の都市の民主政の誇示)とデメリット(戦死の危険、社会構造の不安定化、ローマへの服従の可能性)を他ポリスの事例と比較しながら検証した。また同時に、この軍事貢献の事実が帝政期にどのように記憶されたのかを、帝政期に建立された銘文の検討を通じて考察した。この研究の成果は、本年度6月に開催した国際ワークショップで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2年目として、本年度は小アジアのギリシア人ポリスのローマ帝国主義への関与について幅広く検討を進め、昨年度の成果をアフロディシアスの詳細な分析と組みわせた学会報告をおこなうことができ、研究課題をおおむね順調に進めることができた。さらに、前年度に準備を進めていたアフロディシアスに関する国際ワークショップを無事に開催することができた。そこで、本研究課題に関して第一線の研究者たちと議論を交わすことができ、本研究の次年度以降の方向性を確認したことも非常に大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究をさらに推進するために、3年目は以下の課題に特に中心的に取り組んでいく予定である。 第一に、アウグストゥス(オクタウィアヌス)と小アジアのギリシア人ポリスとの関係に関する学説史を今一度洗い直し、本研究の大きな目的にそった新しい研究素材を発見することである。上記のアフロディシアスに関する国際ワークショップにおいて、招聘した研究者と懇談した結果、本研究の目的達成のためには、共和政から帝政へ移行する過程において、初代ローマ皇帝アウグストゥスが小アジアのギリシア人ポリスのエリート層とどのような関係を構築したのかを分析することが非常に有益であることが判明した。このテーマは、1960年代に主要な研究書が出て以来扱われていないもので、それ以降に出土した多数の銘文史料をもとに、エポック・メイキングな研究を進展できる可能性を秘めている。本研究の目的に従って、このテーマに関する研究史と主要な史料を概観する予定である。 第二に、申請時に計画していた通り、ヘレニズム期後期におけるポリスのローマへの軍事貢献と、アウグストゥス期にポリスと皇帝との間に構築された関係について、それらが帝政期にどのように記憶されたのか、重要な史料を集めて検討をおこなう予定である。 第三に、本研究で重要な立場を占めるアフロディシアス遺跡での現地調査を行う。新型コロナウイルスの流行のため、令和2年度の現地調査は不可能かもしれないが、令和3年度も視野に入れつつ、現地調査の機会を探る予定である。
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Causes of Carryover |
書籍などの購入予定を次年度に延期したたため、若干の次年度使用額が生じた。令和2年度以降は、この次年度使用額も含めた決定額を、主に海外調査のための旅費、研究者の招聘、資料の購入などに使用する予定である。
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Research Products
(4 results)